2014年9月30日火曜日

環境・エネルギーと世界情勢のトレンドを把握するために役立つサイトまとめ

 世の中の動きを理解するためには、まずは個々の出来事を「知る」ことからはじめなくてはいけない。筆者のようにエネルギー関連の仕事をしていると、世界のエネルギートレンドを把握するためには、新聞だけでは足りず、様々な情報源から「質の高い」情報を入手することが必要となる。本稿では、世の中全体の動きと、環境・エネルギー分野の動向を知るために有益なニュースサイトをまとめてみた。



ニュース全般


日本経済新聞 http://www.nikkei.com/#!/


 ビジネスパーソンとして最も代表的とも言える情報源。他の新聞紙に比べ企業情報やマーケット情報が充実しており、お金や各プレーヤー(企業)の動向を把握することができる。


Bloomberg 日本語版 http://www.bloomberg.co.jp/news/markets/energy.html 


 Bloombergは、経済・金融情報の配信、通信社・放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社である。世界各国の経済、投資、エネルギーに関するあらゆるニュースを日本語でも読むことができ、「海外目線」での「海外動向」を把握することができる。


ロイター通信 日本語版 http://jp.reuters.com/


 ロイターは全世界に通信網を持つ英国の通信社であったが、2008年にカナダのトムソンに買収され、現在はトムソン-ロイターとして学術情報、知的財産、ライフサイエンスに関する情報発信を行っている。上述のBloomberg同様、「海外目線」でのあらゆる分野のニュースを読むことができる。エネルギーというカテゴリーはないが、定量的なデータやマップを多く用いており、非常に理解しやすいサイトとなっている。


 日本をより相対的に、また客観的に見るために、海外の国のニュースを読んで、「日本がどのように見られているか」を知ることは重要である。インターネット上には、日本語で読める各国内の情報誌が複数ある。もちろん、毎日読むことは難しいが、時々目を通すだけでも勉強になる。
 例えば、元日銀総裁の白川方明氏は、日本国内ではあまり評価されていない一方で、海外では比較的高く評価されているなど、国内の報道に踊らされないためにも役に立つ。

米国

The Wall Street Journal 日本語版 http://jp.wsj.com/home-page


 ダウ・ジョーンズ社が発行する国際的な影響力を持つ日刊経済新聞。有料だが、概要(一部)は無料で読むことができる。見出しを一読するだけでも、世界の何が注目されているかを把握することができる。


中国

人民日報 日本語版 http://j.people.com.cn/


 中国共産党の日刊機関紙の日本語ニュースサイト。


韓国

朝鮮日報 日本語版 http://www.chosunonline.com/news/index.html


 韓国最大の発行部数を誇る朝鮮日報の日本語ニュースサイト。


ロシア

ロシアの声 日本語版 http://japanese.ruvr.ru/


 ロシア国営ラジオ局の日本語ニュースサイト。




環境・エネルギー


環境ビジネス http://www.kankyo-business.jp


 環境エネルギー分野のビジネスに関する代表的な情報誌。再生可能エネルギーから廃棄物、省エネなど、幅広い分野に置ける政府や企業の動向を知ることができる。主に国内ニュースが中心。有料会員になるとトップランナーや有識者による質の高いコラムを読むことができる。

 環境・エネルギーの情勢を理解する上で、やはり国内だけではなく、「世界全体」の動きを知る必要がある。環境やエネルギー分野の国際動向を日々発信する優良サイトを以下にまとめてみた。


Renewable Energy World  http://www.renewableenergyworld.com/rea/home


 再生可能エネルギーに特化した国際情報サイト。一般的なニュースサイトと異なり、「再エネ」ではなく、「Solar」、「Wind」、「Geothermal」といった細かなカテゴリーで詳細なニュースを提供している。「News」だけでなく、「Opinion」や「Technology」など非常に情報量が多いサイトだが、ホームページの「News」欄だけ毎日眺めるだけでも、各エネルギーに関する動向を把握するのに役立つ。


Bloomberg(Energy) http://www.bloomberg.com/sustainability/energy/


 BloombergのHPでは金融、投資、経済に関する詳細なニュースを発信しているが、エネルギーに関するニュースも一読の価値がある。英語版のHPでは先に述べた日本語版ではピックアップされていない重要なニュースが数多く掲載されている。内容としては、再生可能エネルギーよりも化石燃料が多い。経済情勢と絡めた各国の思惑から論じることが多く、他のニュースサイトより「深く」エネルギーを読むことができる。


EIA(米国エネルギー情報局) http://www.eia.gov/todayinenergy/


 米国政府機関であるEIAが発信するニュースページ。米国内だけでなく、世界各国のエネルギーに関する政府の重要な決定や、動向を知ることができる。全文を読まなくても分かりやすいグラフ等でビジュアライズされており、非常に理解しやすい。ちなみにEIAは世界各国のエネルギーに関する概要および統計を公表しており、各国のニュースと併せて読むとためになる。


Forbes http://www.forbes.com/energy/


 Forbesはニューヨークに拠点をもつ世界有数の経済誌。経済情勢からスポーツや音楽まで様々な情報を当サイトでは掲載している。エネルギーに関しては、世界の主なプレーヤーの動き等のプレスリリース的なニュースだけでなく、最近のトレンドについても発信している。本稿で取り上げている英語サイトのうち、最も英語が平易で読みやすい。


Green Car Congress http://www.greencarcongress.com/


 主に次世代自動車に関する技術的な動向を掲載しているサイト。かなりマニアックな情報が多い上、英語の文章としても難解であるが、他では決して拾わない詳細な動きを迅速にピックアップしている優れたサイト。自動車のテクノロジーだけでなく、再エネ全般、政府の重要な決定や国際機関の研究成果までカバーしているので、興味のある分野についてカテゴリー別に検索して情報を仕入れるのが良い。


IEA(国際エネルギー機関) http://www.iea.org/newsroomandevents/


 世界のエネルギー情勢を知る上で最も重要な組織と言っても過言ではないIEAのHP。「Press releases & top news」では、毎月2本程度、世界のエネルギー情勢に関する記事が発表されるので、短期的な動向を知るのに便利。IEAは、業界では最も信用力のあるといえる「World Energy Outlook」をはじめ有料のレポートを多く発表する一方で、各国のエネルギー動向やトピックごとの情勢、各種統計など、無料でもかなり質の良い情報を提供している。


World Resources Institute  (世界資源研究所:WRI) http://www.wri.org/


 WRIは、ワシントンDCに拠点を有する地球の環境と開発の問題に関する政策研究と技術的支援を行う独立機関。国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行などの共編により、2年に一度「世界の資源と環境(World Resources)」を出版している。「News」では毎月1〜2本程度、気候変動から貧困まで幅広いトピックについて、短期的なトレンドを発表している。



 上述のページにどれほど重要な情報が載っているとしても、英文ではなかなか抵抗感があるし、時間もかかると言う人も少なくないだろう。以下のサイトは、海外ニュースを迅速に日本語訳して発表している。


EICネット http://www.eic.or.jp/


 一般社団法人の環境イノベーション情報機構が運営するサイト。国内外の環境・エネルギー分野の日々のニュースが公表されている。海外ニュースについては、4〜5行で要約されており、英語のサイトをあちこち読む余裕がない時に、概要を把握するのに役立つ。


環境展望台 http://tenbou.nies.go.jp/


 一般社団法人国立環境研究所が運営するサイト。EICネットと同じく国内外の日々のニュースを掲載している。再エネよりは、地球温暖化や生物多様性等の「環境」分野の情報が多い。同サイトでは各環境技術やトピックに関する概要ページがあり、一読するだけでも勉強になる。



その他


経済レポート http://www3.keizaireport.com/

 こちらはニュースではないが、各調査会社や政府が発表するレポートを入手することができる。情報の迅速性が非常に高く、「よくこれを見つけたな」と思うくらい、幅広い情報源から有益なレポートをピックアップしている。日々のニュースではなく、より編集された知識を手に入れるために大変重要なサイト。




 もちろん筆者も毎日すべてのサイトに目を通しているわけではないが、時間を見つけてできる限り様々な情報を得るように努めている。
 記事を読むことよりもはるかに重要なのは、ニュースを読んで「何を考えるか」であり、本稿で紹介するのは、「自分で考える」きっかけを提供する情報源という位置づけであることを強調したい。


2014年6月15日日曜日

教養は「何のため」か

 前回、 教養に関する3つの疑問 ①「なぜ学ぶ必要があるのか」、②「どうやって身につければよいのか」、③「そもそも教養とは何か」のうち、③について、教養とは「『人間性』や『人格』と結びついた知識である」ということを述べた。

 本稿では①「なぜ教養学ぶ必要があるのか」について、「ビジネスマンにとっての意義」という切り口で考察してみたい。


(出典)http://free-photos.gatag.net/tag/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8


2014年6月4日水曜日

「教養とは何か」について考えてみる


(出典)GATAG
http://free-photos.gatag.net


 「教養を身につけた方がいい」と言われたことはないだろうか。決して注意喚起という意味ではなくても、「教養の重要性」を語る声は、大学時代の学部の先生や会社の上司、NHKや書店の平積みの本の中から日常的に聞こえてくる(少なくとも筆者の周りでは)。

 ありふれたメッセージであるにもかかわらず、教養の習得をリコメンドされたときに、「よし、明日から教養を身につけよう!」と昂揚する人は希有である。おっしゃる意味がよくわからないからだ。

 一般的に、脈絡なく「教養を身につけろ」と言われた場合、意識・無意識は別として次の3つの疑問が生じる。「なぜ?」「どうやって?」「そもそも教養って何?」。。


教養とは何か


 「そもそも教養って何?」という疑問は特に重要である上、難しい。「教養」という言葉自体、「愛」とか「幸せ」と同じようにあまりに漠然としている。具体化するために質問を少しずらして「『教養のある人』とはどんな人か?」について考えてみる。


教養のある人とはどんな人か

 やや主観的ではあるが、例えば普通の会社のサラリーマンでいながら、能や茶道に精通していたり、ローマ帝国の五賢帝をそらで言えたり、休日にアリストテレスの『ニコマコス倫理学』を読んでいるような「幅広い知識」を持った人は「教養のある」人と認識される可能性が高い。

 しかし、日本語の権威である広辞苑によると「幅広い知識」だけでは足りないらしい。

2014年5月23日金曜日

C世代に迫るスマホ・ネット依存症の脅威 その2

 前回は、現代の日本社会に生きる人々、とりわけC世代に欠かせないインフラとなったスマートフォンとインターネットに潜む「依存」の危険性について述べた。本稿では、パソコンやスマホが我々の「脳」に与える影響について考察したい。


ネットとスマホが与えるマイナスの影響

 現在、各国の研究者の間でパソコンやスマホが脳にもたらす影響について研究が進められているが、主なものは以下の3つである。

2014年5月14日水曜日

C世代に迫るスマホ・ネット依存症の脅威 その1

 最近「C世代」という言葉をよく耳にするようになった気がする。以前も本ブログにて記事を書いたが、「C世代」とは、常に仲間(Community)繋がって(Connected)いて、会話好き(Communication)で、貢献意欲が強く(Collaboration)変化を求め(Change)創造性豊かな(Create)10代、20代の若者たちを指す。

 他の世代よりも、はるかにスマホやネットなどのITスキルが高く、それを活かした行動力やコミュニケーション力が光る世代だが、今回と次回では、C世代が抱える闇の部分に触れてみようと思う。



(出典)http://jp.freepik.com/free-photo/smartphone_527946.htm

 さて、今週の日経新聞に掲載された以下の記事を読んでもらいたい。

2014年5月4日日曜日

【書評】チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド by 東浩紀 〜 チェルノブイリの事例から福島第一原発の「観光地化」を考える 〜


(出典)東京電力

「福島第一原発観光地化計画」という言葉をご存知だろうか。

 あの禍々しい事故から3年、東京電力が未だ後処理の目処すら立たない中、「福島第一原発を観光地にしよう」という動きをしている人たちがいる。

 著名な思想家・作家・評論家の東浩紀氏らは、数年前から水面下で構想を組み立てている。

福島第一原発観光地化計画 Facebookページ
https://www.facebook.com/fukuichikankoproject

 「事故現場を見せ物にするな」と思うかもしれない。また、「観光地にするまでもなく、あの事故を忘れることなどあるものか」と言う人もいるだろう。

 しかし、当事者でなければ、どんな歴史的事故でも一定期間経てば記憶から消去されてしまう。実際、1986年に福島と同じ歴史的原発事故が発生したチェルノブイリでも、約30年経過した今、多くのロシア人とウクライナ人の記憶から徐々に薄れつつあるようだ。


チェルノブイリの「今」

 その現象に歯止めをかけるため、チェルノブイリ市が3、4年前から始めたのは原発周辺地域の観光地化である。

2014年4月27日日曜日

【書評】反貧困 (湯浅 誠著) 〜知られざる日本の貧困問題〜

 「日本は豊かな国だ」という考えがいかに軽率であることか。本書を読みながら、後頭部を殴られた思いがした。そして、これまでずっとメディアや政府が提示する日本の姿を妄信し、「リアルな姿」から目をそらして来たこと痛感した。

 もちろん、日本が“いわゆる”「豊かな国」であることは依然として疑いようがない。GDPは世界3位、サラリーマンの平均年収は2012年末の時点で408万円。これは世界の上位0.83%に入る(※)。世界の平均“年収”が約10万円であることを考えると、日本は世界的に“稼いでいる”国と言える。

 こうした統計データに頼るまでもなく、「日本が貧しい国だ」と思わせる要素は微塵もない。街を歩いていてもすれ違うのは“普通の”(中流の)人ばかりであり、どの場所もきちんと整備され、スラム街もなければ物乞いに出会うこともない。


貧困大国「日本」

 しかし、そんな日本の水面下で今、「貧困問題」が社会を蝕みつつあるのだ。上に示した「稼ぐ国」のデータからは想像はつかないかもしれないが、日本の貧困率はOECD諸国内で米国に次いで第2位。まさに「貧困大国」といっても過言ではない(※※)。

2014年4月20日日曜日

【エネルギー】ウクライナ危機が世界のエネルギー需給に及ぼす影響について

ニュース概要

 ウクライナ危機をめぐって米国陣営とロシアとの対立が激化している。それにより、エネルギーの流れが変わる可能性が出てきた。現在、米国内を中心に、「米国産の天然ガスや原油を欧州連合(EU)諸国やウクライナに供給し、各国のロシア依存を解消しよう」といった議論が展開されているのだ。

 米国内で起きたシェールガス革命によって、欧州内でガス需要が減少したため、同地域のロシアに対するガス依存度は下がりつつある。米国は自国の資源を欧州にさらに輸出し、ロシアを欧州市場から閉め出すことでロシアに打撃を与えようと動き出している。


ニュースの位置分析

 このニュースを、システムシンキングを使って、現在の世界のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。


図 世界のエネルギー情勢とウクライナ危機をめぐるシステムシンキング




2014年4月16日水曜日

【エネルギー】 エネルギー基本計画が閣議決定

ニュースの概要と所感

 政府は4月11日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。今回の基本計画で最も重要なポイントは、民主党政権下で掲げた2012年9月に掲げた「30年代に原発稼働ゼロ」を完全に撤回したことである。

 自民党は基本計画の中で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、長期的に活用していく方針を示した。同計画は、安全性が確認された原発から順次再稼働を進めるとしている。ただし、具体的な原発比率などの数値目標は記載されず、様々なステークホルダーに配慮したものと見られる。

 一方で、再生可能エネルギーは「2020年に13.5%、2030年に20%」という数値目標が掲げられ、今後も継続的に導入を促進する方向性を示した。

 ただし、依然として火力頼みの電力構成が続く内容となっており、原発の再稼働も含めると、再エネのトーンは震災直後のピーク時から縮小したと言える。



ニュースの位置分析

 このニュースを、現在の日本のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。
 日本を取り巻くエネルギーの潮流を関係ループ図で示したものが以下の図である。




2014年4月12日土曜日

ロジカルシンキングの限界と複雑な現象を読み解くためのシステムシンキング その2

 前回の記事では、世の中の複雑で動的な現象を読み解くには、「AならばBである」という一般的なロジカルシンキングでは難しいということをお伝えしました。今回は、「動的な現象の表現方法」について考えてみたいと思います。

 本稿では、いかのようなケースを想定してみます。
ハンバーガー業界では、近年競争が激化しており、業界トップのX社ですら売り上げの減少に苦戦していた。こうした事態に対処するため、X社では商品(ハンバーガー)の大幅な価格ダウンを行い、マーケットシェアを激増させ、売り上げも回復させた。

ロジカルシンキング

 まず、上記現象をロジカルシンキングで考えてみます。一般的に「売り上げ」は以下のように要素分解されます。


売上高=価格×数量



 
 この式とロジックツリーは、売上高は数量と価格という2つの変数(いわゆるMECEな関係な変数)によって決定されるということを表しています。

 しかし、これでは「価格を下げることにより、売れる数量、マーケットシェアが変化した」ということを表現できません。

 本来、売上高のロジックツリーには、要素間に以下の図に示すような因果関係があるはずです。



2014年4月11日金曜日

ロジカルシンキングの限界と複雑な現象を読み解くためのシステムシンキング その1

 1ヶ月以上も更新を怠ってしまいました。毎回読んで下さっている読者の皆さんにはお詫び申し上げます。

 さて、しばらく記事を書かなかった、いや書けなかったのは、仕事の繁忙期であったこと(言い訳がましく恐縮です)に加え、「あること」に対する疑問を払拭できなかったからです。

 その疑問とは、「各ニュースを単一のStream(背景)だけで理解してよいのか」ということです。
 本ブログ「NEWstreamer」では、例えば「薬のネット販売解禁」というニュースに対し、

Stream① 政府の経済成長戦略(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream② 社会保障費の拡大(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream③ 少子高齢化(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream④ 医療大国を目指すための戦略(→それにより、薬のネット販売解禁)

というように、「A → B(AによってBが生じる)」という、直線的かつ単純な論理展開で表現してきました。言い換えれば、いわゆる「静的」で、Streamの時間的変化を無視した表現とういことになります。もちろん今でも記事でお示ししてきた背景はいずれも的を外しているとは思っていません。

2014年2月22日土曜日

C世代としての私のこだわり「anti-"Connected"」 #ブロガソン

 以前、「C世代」が動き出す 〜“デジタルネイティブ”がリードする社会へ〜 という記事を書いた。その時は、自分のクリエイティビティを活かして起業した15歳の椎木里佳さんの活動を紹介した。本稿では「自分は「C世代」なのか」ということについて言及してみたい。

一度、「C世代」について復習してみる。


  • Connected(常にみんなとつながっている)
  • Community(共同体を形成する)
  • Change(変化・新しいものを好む)
  • Create(創造性がある)
  • Communication(会話好きな)
  • Collaboration(みんなと協力する)
  • Contribute(貢献意欲の高い)
  • Casual(四角ばらない)
  • Cameleons(自分のキャラを変化させる) 等

 上記の中で、自分が持っている性質を自問自答してみると、

Change:変化・新しいものが大好きだ。同じジュースは2度と買わない。
Contribute:一応社会のために役立ちたいと思っている。ボランティアもしたし。
Community:仲間を作って何かをしている。このブロガソンもしかり。
Cameleons:自分のキャラが人によって違う気がする。友人より、多重人格という説も。

 加えて、このブログのように何か記事を書いて、自分と関わりのない人に対して情報発信を行っている(およびそれが楽しいと感じる)ことからも、おそらく自分は「C世代」なのだろう。

 しかし、筆者自身が「C世代」であると言い切るのに一瞬躊躇したのは、C世代が持つ最も代表的な性質を有していないからだ。それは

2014年2月9日日曜日

【書評】 堀江貴文「ゼロ」 〜成功とはチャレンジ × 全力疾走〜






 久々に心に「刺さる」ビジネス書を読んだ気がする。

 堀江氏のこれまでの紆余曲折な人生を回想するとともに、数々の失敗や成功から自らが学んだことを、若い世代に懸命に伝えようとする「心意気」が感じ取れる。ストーリーとしても面白いし、ビジネスマンとして働く上でも大いに勉強になる本であった。

 ライブドア時代、メディアが取り上げる堀江氏、否、ホリエモンは、いわゆる「カネの亡者」として世間の目に映っていた。しかし、テレビ局の買収にしても、衆院選屁の出馬にしても、「カネ」ではなく本気で「世の中を良くしたい」という誠実な思いから行動していたのだと読んでいてわかった。

 糸井重里は対談のなかで、堀江氏のことを「ひとを幸せにする本気でおせっかいな人」と評している。加えて「それだけおせっかいなら、そりゃあ、波風立つよ」とも。

 たしかに、その「おせっかい」のせいで栄華を極めた日々は「ゼロ」に帰してしまう。しかし、その「ゼロ」から再び最初の「イチ」を始めようとする堀江貴文(ホリエモンではない)のメッセージは極めて洗練されている。




 以下、筆者がこの本の中で特に印象的だった4つの学びを記す。

2014年1月31日金曜日

都知事選とB層について 〜細川氏、都知事選立候補を表明〜

ニュース概要

 細川護熙元首相(76)は22日、東京都庁で記者会見し、23日告示の東京都知事選への立候補を正式に表明した。会見で、細川氏は「政府が原発を再稼働させようとしていることに危機感を覚えたことが出馬を決めたきっかけだ」と説明。「力を尽くして東京を良い方向に進め、国のありようにも、もの申したい」と述べた。
(1/22 日経新聞 朝刊より)





ニュース詳細↓

日本経済新聞(2013年1月22日)細川氏、都知事選立候補を表明 原発に危機感
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2203A_S4A120C1000000/

日本経済新聞(2013年1月15日)細川氏、出馬を表明 都知事選 小泉氏が支援、脱原発訴え
http://www.nikkei.com/article/DGXDASFS1401D_U4A110C1MM0000/

日本経済新聞(2013年1月23日)細川氏「原発ゼロ何よりも大事」 都知事選 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG23028_T20C14A1CC0000/



このニュースの背景(Why?)

 このところ街に出る度、騒がしいマイク音声が耳につく。2月9日の都知事選を控え、16人の候補者がしのぎを削って演説を繰り返しているようだ。今回の都知事選はいつもと少し様子が異なり、都民のみならず、全国からの注目度も高いらしい。

 それもそのはず、2020年に開催される夏季五輪を成功させられるか、同時に本格的な少子・高齢社会に突入する「2020年」の首都の姿をどう描くかが問われる重要な選挙だからだ。しかし、都政の課題をよそに、国のエネルギー政策の是非を巡る元首相の発言に注目が集まっている。


 「原発ゼロが何よりも大事だ」

 元首相の細川護熙氏はそう訴える。その背後にいるのはもう一人の元首相である小泉純一郎氏である。

 小泉氏といえば、「郵政民営化に賛成か、反対か」の一点張りの選挙演説を思い出す。彼がバックアップに回った今回の細川元首相の演説は、小泉氏のそれと酷似している。


「原発を即時ゼロにするか、再稼働か」

 東京都知事を決める選挙であるにもかかわらず、なぜか論点が「原発」限定になっている。小泉氏が選挙で勝つために、論点を郵政民営化のみに絞り、(小泉氏の他の政策は気にもとめず)郵政民営化にとりあえず賛成する民衆の票をごっそりつかんだ時と同じやり方である。
(実際細川氏は都の他の政策のことをほとんど考えておらず、原発以外の政策についての発表を延期に延期を重ねていた。)

 ここで細川氏と小泉氏の政策内容に焦点を当てたりはしないし、個人的に興味はない。筆者が着目するのは彼らのマーケティング手法だ。

2014年1月13日月曜日

「C世代」が動き出す 〜“デジタルネイティブ”がリードする社会へ〜

ニュース概要

 JK(女子高生)のカワイイ文化を世界に――。都内の私立女子高に通う椎木里佳さん(16)が株式会社AMFを設立したのは2013年(中学3年時点)のバレンタインデーのことであった。
 資本金は45万円。15年間の全貯金でも足りず、一部は父親から借りた。設立目的は「テレビ番組の制作」「日用品雑貨の企画」などと記入した。
 15歳だった彼女は起業の壁を「渋谷に遊びに行くくらいの感覚」で軽やかに越えた。(1/9 日経新聞 朝刊より)

株式会社AMF 概要

 2013年2月14日設立。“世界の10代を元気にしたい”をモットーに、日本のJKのかわいい文化を発信するための企画、制作、番組出演などを行っている。
 社長の椎木里佳氏は、2012年5月サイバーエージェントから女子中高生向けサービスのアドバイザー起用され、スマホ用アプリ「JKめざまし」を開発。米国や台湾のCATV局もJK文化のネット動画を買いたいと打診している。

ニュース詳細↓

日本経済新聞(2013年1月9日) 恐るべき子どもたち 次代の寵児か、あだ花か
http://www.nikkei.com/article/DGKDASM10700N_X00C14A1MM8000/




このニュースの背景(Why?)

 「最近の“若者”はすごいな・・・」と(一応)若者ながらに感嘆してしまったニュースであった。椎木里佳さんは1997年生まれ。筆者のちょうど10年下である。「中学3年で起業」なんて、おそらく10年前では考えられなかったニュースではないだろうか。

 自分が中学3年生の時をふと思い出す。当然ながら、自分で会社を作ろう(今の僕が作れる)なんて概念すら1ピコグラムも存在しなかったし、「世界を元気にしたい」とか「社会にメッセージを発信したい」なんて思いも脳裏をよぎることすらなかった。

 「中学3年で起業」というニュースは椎木さん“個人”からわき起こったニュースだろうか?察するに、彼女自身、意識が高く視野も広い、相当しっかりした女性なのだろうが、やはり一つの社会現象として捉えるのが妥当であろう。

 着目すべきは椎木さんをはじめ、今どきの若者達が「C世代」に属するということである。

2014年1月3日金曜日

20代をどうすごすか 〜メグ・ジェイ氏「“30代は20代みたいなもの”じゃありません」のプレゼンから〜


 2014年が始まった。筆者にとっては26歳、つまり20代後半に差し掛かる年ということで、この正月にはいつもとは違う“重さ”が感じられた。そして、来月26歳を迎えるにあたり、20代の後半戦をどのように過ごすかを再考せずにはいられなかった。

 そんな中、つい昨日であるが、20代の過ごし方に関して一つのヒントとなるプレゼンテーションに出会ったので、本稿ではそれを紹介したい。

 プレゼンテーションタイトルは「 Why 30 is not the new 20」。直訳すると「“30代は20代みたいなもの”じゃありません」

 「どういうこと?」と一瞬思われるタイトルのプレゼンをしてくれたのは、バージニア大学の心理学者であるメグ・ジェイ氏である。

 彼女はカリフォルニア大学バークリー校で臨床心理学とジェンダー学の博士号を取得し、現在はバージニア大学で臨床心理学を教える傍ら、私設のクリニックで患者を診ている。20代の患者や学生を指導した経験を基に、TEDカンファレンスおよび自身の 著書「The Defining Decade」で20代で自分に投資する事の重要性を訴えた。

 まずはプレゼンテーションを見て頂きたい。




(出典)TED  http://www.ted.com/talks/meg_jay_why_30_is_not_the_new_20.html

  メグ・ジェイ氏は兎にも角にも「20代で自分自身に投資をすること」の重要性を強調する。現在、結婚や出産、就職など様々なイベントが年齢的に遅くなっているのは周知の通りである。その実情は「まだ働かなくてもいい」とか、「結婚はまだ先でいい」と考える若者が日本でもアメリカでも増加しているのである。したがって、「20代はモラトリアム期間」として、「30代になったら・・・」と考える若者は決して少なくない。

 しかしメグ・ジェイ氏はこれを全否定する。「『30代になってから・・・』ではもう遅い」と。米国のあらゆる統計を分析した彼女は次のように主張する。


  • 人生の重大な出来事の8割は35歳までに起こる。
  • 生涯の賃金はキャリアの最初の10年で決まる。
  • 半数の人は30歳までに結婚相手に出会う。

 巷では「第2の人生」とか、「何かを始めるのに『遅い』はない」という言葉が飛び交っている。しかし、人間の脳は20代にピークを迎え、その後どんどん衰え、頭が固くなっていくのは事実。また、将来に何の恐怖もなく自分の直感に従って自分に投資できるのは20代ならではである。

 やりたい仕事をやるには「その前の準備」が重要、そしていい人と結婚して幸せに暮らす前には「結婚する前の努力」が重要、と彼女は言う。メグ・ジェイ氏が20代に伝えたいことは次の一言に尽きる。


Get identity capital ! (自分自身の価値を高めよ)

 「ではどうやって?」という質問に対して、彼女は以下の3つのポイントを提示している。

2013年12月23日月曜日

ロシアを取り巻く勢力図の変化 〜「ウクライナ」と「シェールガス」の視点から〜

ニュース概要

 旧ソ連圏第2の大国のウクライナを巡り、欧州連合(EU)とロシアの囲い込み競争が激しさを増してきた。ウクライナを自らの経済圏に取り込もうと、ロシアはガス料金の3割引き下げや150億ドル(約1兆5400億円)にのぼる金融支援で合意。EUも支援額の積み増しに応じる構え。ウクライナのヤヌコビッチ政権はさらなる支援獲得を狙うが、両者をてんびんにかける外交姿勢に不信感も広がっている。(12/18日経新聞:ロシアとEU、ウクライナ支援合戦 ガス値下げや資金協力増額 より)



このニュースの背景(Why?)

 日本にとってはそれ程なじみのある国ではないが、ロシアと欧州の間に位置するウクライナという国が、最近世界の注目を浴びている。同国は現在、欧州からはEUへの統合および自由貿易協定への加盟を要求される一方、ロシアからは欧州とは逆に関税を中心とした保護貿易協定への加盟を求められているのだ。旧ソ連圏のウクライナがEU側に付くのか、ロシア側に付くのか、同国の決断を各国が真剣なまなざしで見守っている。しかし、なぜこの時期にEUがロシアとの対立を深めてまで、ウクライナにまで勢力を伸ばそうとしているのか。それについて、以下にて考察する。


図1 ウクライナの地図
(出典)Wikipedia

背景1:冷戦後も解消されないアメリカ圏 vs 旧ソ連圏の対立構造

 ウクライナは第2次世界大戦からソ連に取り込まれ、半世紀以上社会主義体制の下にあった。1991年のソ連崩壊によって、独立が認められ、念願だった民主主義を取り戻した。独立によりウクライナは、名目上ロシアと対等になったが、実際はエネルギーや経済(貿易)面でロシアに依存せざるを得ず、暗黙の上下関係は今なお残っている(日本とアメリカの関係に類似している)。したがって、ウクライナは中・東欧の国でありつつも、EUとは比較的疎遠であり、ロシアの息がかかった国なのである(因みに、現在のヤヌコビッチ大統領は完全なる親露派である)。

 EU内ではロシアは「戦略的パートナー」と位置づけつつも、勢力としての対立構造は存在している。冷戦が終結したあとも、アメリカ圏 vs 旧ソ連圏という構図は解消されていない。EUは「自由貿易協定」という言葉を切り口にEUへの加盟をウクライナに求めているが、内心は安全保障の面で同国をアメリカ圏側に取り込みたいのだろう。


背景2:米国におけるシェールガス革命

 背景1で、EUとロシアが暗黙の対立をしていると述べたが、最近までEUはロシアに向かって強くものを言うことができなかった。なぜなら、EUは天然ガス等のエネルギー面でロシアに大きく依存しているからである。
 
 欧州諸国はロシアからパイプラインによってガスを輸入している。そして、このパイプラインはウクライナを経由し、欧州に届くルートになっている。2005年にウクライナがロシアとガス料金の問題でもめた際に、ロシアが怒ってウクライナ向けのガスの供給を停止したことで、欧州はガス供給が滞り、大きな被害を被った苦い記憶がある。そのような事も含め、欧州はエネルギー面の「脱ロシア依存」が大きな目標となっていた(ウクライナも同様)。

 そこで現れたのが「シェールガス革命」である。米国において、2008年くらいから資源採掘における技術革新が起こり、膨大な資源量がありながらも経済的に取り出せなかった頁岩(シェール)中のガスを安価に取り出す事ができるようになった。そして、米国内のガス価格は一気に下落し、国内の発電燃料の中心を担うようになった。





図2 頁岩(シェール)
(出典)Wikipedia

 世界最大の天然ガス埋蔵量を誇るロシアは当時、シェールガス革命は米国内だけの話であり、自分たちのビジネスには影響はないとして静観していた。事実アメリカはFTAを結んだ国以外にシェールガスを輸出する意向はないと述べていた。しかし、シェールガス革命はロシアに対し、予想をしていなかった方法で影響を与える事になる。

 米国内でガス発電が主流になったことにより、それまで発電の半分近くを占めていた石炭発電の割合が数年間で40%を切るまで下がった。米国は石炭が豊富であり、そのため石炭発電が盛んだったが、シェールガスの台頭によりガス発電の方が低コストになってしまったため、アメリカの石炭産業は大きな打撃を受けた。

 そこでアメリカの石炭業界は、自国では石炭が売れないので、欧州に輸出する戦略を取った。これにより、欧州には安価な米国産石炭が大量に流れ込み、ヨーロッパ内の石炭マーケットの価格が一気に下落した。それにより、欧州では石炭発電の価格が下がり、石炭が発電の中心的存在になった。そして、ロシアからのガス需要は2010年以降30%近く低下した。つまり、米国とは全く逆の現象が起きたのである。

 これは、ヨーロッパにおけるガスの重要性(=ロシアへの依存度)が低下したことを意味する。要するに、パイプラインでガスを供給しているロシア(正確には国営企業であるガスプロム社)に対し、「もっと安くしてくれないと買わないよ」と(上から目線で)言えるようになった。

 それに追い打ちをかけるように、今度はポーランドやドイツ、そしてウクライナにおいて、米国ほどではないが、大量のシェールガスが発見された。これらの開発によって自国内でガス調達ができればロシアからのガスの重要度はさらに下がることになる。

日本経済新聞(2013年11月7日)ウクライナ、シェールガスを外資と開発 ロシアと溝深まる
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM06042_W3A101C1FF2000/


図3 世界のシェールガス分布図
(出典)米国エネルギー情報局(EIA)



 これに焦ったロシアは、現在、アジアに対するガスの輸出拡大に躍起になっている。特に、世界最大のLNG(液化天然ガス)輸入国である日本は重要なターゲットとしており、プーチン大統領が北方領土問題などで日本にすり寄る動き(これまでは考えられなかった“低姿勢”)を見せるなど、切迫感が垣間見える。

 このように、シェールガスの存在によって、昨今相対的なロシアの影響力が低下しつつある。この機を逃すまいと、EUは旧ソ連圏で同じ“脱ロシア”を目指す勢力を有するウクライナを仲間に引き入れようと動いたと考えられる。


背景3:反EU派勢力の伸長

 ロシアに対するエネルギー依存の問題は改善されつつも、EUはもっと大きな問題を抱えている。EU各国の中で、EUからの離脱を掲げる「反EU派勢力」の政党が拡大しているのだ。キャメロン首相率いる英国の独立党、仏極右政党の国民戦線、ギリシャの「黄金の夜明け」・・・オランダ自由党のウィルダース党首は英テレビ局に「当然、EUからの離脱を主張する」と公言している。

 欧州金融危機を経験し、一つの国(ギリシャ等)が信頼度を失うと加盟国全部がダメージを受けるというリスクが顕在化したことが主な理由だろう。このような内部分裂因子の拡大も、旧ソ連圏の大国かつ優等生であるウクライナの加盟推進に起因していると思われる。


ニュース詳細↓

日本経済新聞(2013年12月17日)EU・ロシア、ウクライナ問題で互いにけん制
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1700N_X11C13A2EB1000/

日本経済新聞(2013年12月20日)EU、中東欧囲い込み狙う 首脳会議 エネ・貿易 突破口に ウクライナなどに脱ロシア促す 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGM20055_Q3A221C1FF1000/

日本経済新聞(2013年12月20日)ウクライナの囲い込み意欲 定例会見 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1904D_Z11C13A2FF1000/



このニュースが意味するもの(So What?)

 プーチン政権下のロシアは、周辺諸国(特に旧ソ連国)に対してかなりの高圧的な外交を取ってきた。しかし、今回のウクライナがEUに口説かれている件に関して、本来であればロシアは強引な態度(“ムチ”外交)を取る場面かもしれないが、ウクライナに対し先日150億ドルの財政支援を行うなど“アメ”外交に注力している。これは、来年に控えるソチ五輪を前に、世界に対し、自国の良いイメージをアピールしたいという思惑があるのだろう。逆に言うと、ロシアにとっては他国に対して強い態度が取りづらい時期とも言え、EUはそこにつけ込んでいるのかもしれない。いずれにせよ、“アメ”外交の勝負になる可能性が高い。

 米国で起きたシェールガス革命は、アメリカ圏つまり“西側勢力”に大きな力を与える事になった。米国はこれまで石油のほとんどは中等頼みだったし、先述の通りEUはロシアにガスパイプラインという首根っこをつかまれてきた。中東やロシアの西側諸国に対する存在感(力の強さ)は“エネルギー・資源供給国である”ことが全てといっても過言ではない。彼らに頼らずとも、米国内およびEU内でシェールガスというエネルギーが産出できることは、世界のパワーバランスの変化につながるだろう。米国は今後中東外交に対する注力度を減らし、アジア外交(TPP等の自由貿易)に重点を置いていく可能性が高い。




 




 

2013年12月1日日曜日

日本は太陽光発電から風力と地熱の国へ   太陽光価格2割下げ 再生エネ、風力・地熱に軸足





        (出典)Wikipedia

ニュース概要

 経済産業省は固定価格買取制度(FIT制度)における、太陽光発電の買い取り価格の引き下げを視野に、再生可能エネルギーの普及策を見直す。電力会社に買い取りを義務づける価格は2015年度に1キロワット時30円と、13年度の38円から2年で2割以上も下げる案が浮上。高コストの発電が増えすぎて利用者の負担が重くなるのを抑えるとともに、風力や地熱の拡大に軸を移す。政府は電源の多様化に必要な規制緩和も進める。


このニュースの背景(Why?)

 現在、先進国・途上国を問わず、世界中で再生可能エネルギーの導入が加速している。しかし、当然と言えば当然であるが、再生可能エネルギー(例えば風力や太陽光)発電は、燃料費はかからないとはいえ、発電するためのコストが化石燃料の発電より非常に高く、普通にやったら全く採算性が合わない

 そこで必要となるのが国のサポートである。例えば、民間企業が風車を立てる際の建設コストの何割かを国が出費する補助金が代表的である。しかし、初期コストが下がっても、いざ発電して電気を買ってもらえなければ発電事業にならない(風力発電や太陽光発電は、基本的に出力の変動が大きく、電力会社はそのような電力を買いたくない)。ではどうすれば導入が進むのか。

 現在世界各国で主流となっている、極めて重要な再生可能エネルギーのインセンティブ政策は2つある。RPS制度と2012年から日本に導入されたFIT制度である。本稿ではこれらの制度の違いを説明しつつ、太陽光から風力や地熱に軸足を移そうとしている政府の動向について言及していきたい。


RPS(Renewables Portfolio Standard)制度

 RPS制度は、政府が各電力会社に対し、彼らが販売する電力量の一定割合を再生可能エネルギー等の電力で賄うことを義務づける制度のことである。我が国では、2003年から導入されている。

 この制度を一言で言うなら、導入する「量」の固定である。ちなみに、定められた量よりも多くの再エネを導入した電力会社は、目標値を達成していない他の電力会社に再エネ電力を売る事ができる。

 なお、ここでのポイントは、「太陽光」「風力」「水力」と分けずに「再生可能エネルギー」(の導入量の固定)とひとくくりにしている点である。その理由は、複数の種類の再エネ電源を電力価格 で競わせ、競争による価格低下を狙うためである。したがって、充分に市場化された複数の 技術を競争させるには適して いるが、 新技術の普及拡大には不適といえる。

 RPSの問題点は、導入する量=再エネの市場規模について、どの程度の市場規模が適切 かという判断を客観的に決めることは難しく、どうしても恣意的になってしまう点である。それは何を意味するかというと、導入量を決める国の審議会において、電気・ガス・石油など、各業界の政治力の 利害調整が大きく響いているということである。実際、日本のRPSの目標値は欧米に比べ一桁小さく、目標達成できなかった場合のペナルティも非常に小さいことからも、業界からの圧力が大きかったことが推察される。


固定価格買取制度(Feed in Tariff : FIT)

 東日本大震災後の2012年7月から、日本では固定価格買取制度が導入された。これは、民間企業でも、個人でも、再生可能エネルギーで発電した電力は、東電等の電力会社に高い価格で売る事ができる制度である(電力会社は強制的に買い取らなくてはならない)。

 この制度は(RPS制度が導入量の固定だったのに対し)再エネで発電した電力の買取価格を固定する。その価格は、RPSと異なり、再エネの種類ごと異なっている。なぜかというと、図1の通り、各再エネごと一定量の電力を生み出すのにかかるコスト(発電コスト)はバラバラだからだ。


図1 日本の再生可能エネルギーの設置コスト

(引用)自然エネルギー財団HP http://jref.or.jp/energy/wind/issues.php

 FIT制度の買取価格は、装置代とか運用コスト等から計算される上記発電コストに、利潤が生まれるような価格を上乗せして設定されている。導入量が増えれば装置価格は下がるので、買取価格も毎年見直される

 例えば、10 kW以上の太陽光の場合、2012年度は42円/kWh、2013年度は37.8円/kWhとなっている。ただし、買い取り価格42円/kWhの年に申請し認定を受ければ、発電開始時期は問わず、開始したタイミングから20年間42円/kWhで売電する事が可能となる。このように、FIT制度では、発電する事業者がもうけられるような仕組みが整えられているのである。

 こうして、様々な企業が儲けようとして再エネ発電事業を行い、国内の再エネ導入量が増えるというのが政府の狙いなのだ。その導入量は、RPSのように固定されていないので、買い取り価格次第では、ある意味導入量は青天井となる。

 特に、太陽光発電の買い取り価格は非常に高く、非住宅用についてはFIT制度前は累積0.9 GWだったのに対し、FIT制度が始まって1年に満たない2013年2月末では11 GWとなっている(認定を受けた数値であり、実際運転しているのは半分以下であるが)。現在のところ、太陽光が再生エネの導入量全体の95%を占めるという非常にアンバランスな状況が日本ではできあがっている。


図2 FIT制度前後の各再エネ導入量の比較
(参考)資源エネルギー庁HP  http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/kakaku.html


太陽光発電の買い取り価格を下げた背景

 このように、再エネの導入が進んだことは確かに喜ばしいことではあるが、肝心な事を忘れてはならない。それは、FIT制度で導入された再エネ電力の買い取り価格は、全て我々国民の電気料金に跳ね返ってくるという事である。

 認定を受けた設備のうち、全てが運転に至るわけではないが、仮に太陽光発電12 GWを42円×20年間買い取ると、総額7兆円~8兆円の補助金が必要となる、という試算もある。
(参考)http://chinshi.blog102.fc2.com/blog-entry-155.html

 実際、再エネが進んだドイツでもFITによる電力料金の高騰は問題となっている。2000年からFITを始めた同国は、太陽光の急拡大を受け14年の家庭の負担は年3万円近くに達する見通しらしい。また、スペインの財政危機の要因を作ったのはFIT制度による圧迫だったという報道も存在する(財政破綻後スペインはFITの廃止を宣言している)。

 日本の太陽光発電の買い取り価格は世界的に見ても高く、ドイツやスペインと同じ状況が懸念される。太陽光発電は、広く普及したと言えるため、今後は買い取り価格を抑えつつ、他のエネルギーを増やしてバランスを取ろうという話が今回のニュースである。


ニュース詳細

日本経済新聞(11月18日) 太陽光価格2割下げ  再生エネ、風力・地熱に軸足 経産省検討、家庭の負担抑制 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS17015_X11C13A1MM8000/


このニュースが意味するもの(So What?)

 FIT制度が始まって以来、太陽光偏重の導入が行われ、風力等の他のエネルギーの普及が進んでいない事への批判記事をよく見かけるが、あまり的を得ていないようにも思える。確かに、太陽光の買い取り価格は他と比べても優位性があるのは事実だが、他のエネルギーの導入が1年たっても停滞しているのは、単純な話、太陽光以外のエネルギーは導入までに1年以上かかるからである。

政府の想定通りに再エネ導入は進んでいる  土地があれば、パネルを置いて完了の太陽光発電とは異なり、例えば、風力や地熱は今の制度では環境影響評価(アセスメント)等の手続きが必要で、非常に面倒である。政府は当然それを理解しているのであって、まずは太陽光の導入を進め、FIT制度の明確な実績を出しつつ、その間に水面下で風力や地熱等の規制緩和を進めるという目論みがあったのではないだろうか。





 日本では再エネ=太陽光というイメージが主流だが、それは欧米とは異なる。欧米で再エネといったら「風力」なのである。風力発電は太陽光発電と違い、夜間でも発電ができるメリットがあるのに加え、大事な事だが、発電コストが非常に低い(図1参照)。

実はあまり発電していない太陽光パネル  また、風力の設備稼働率も太陽光より遥かに高い。設備稼働率とは、「一年間のうち、定格出力で運転したのはどれくらいの割合か」を示す数値である。定格出力はkWで表されるが、これは「この装置は“1時間”にどれくらいの電力を生み出せるか」というスペックを表す。これは、陸上競技でいうならば「最高どれくらいの速度で走る力がある人か」を示す。

 しかし、仮に最高30 km/時で走れる人がいるとしても、その速度が「一瞬だけなのか、1時間ずっと30 km/時で走れるのか」は別問題である。発電事業において大事なのは、「走った距離」つまり実際の発電した量である。

 実際、太陽光の設備稼働率は12%程度であり、それは、例えば1 MWの設備規模の発電所があっても、1年間で1時間当たり1 MWhの発電ができている(能力を発揮できている)のはたった12%の時間だけということ。ちなみに、例えばガス火力発電は設備稼働率60%を超える。これでは同じ1MWの発電所だとしても、生み出す電気に大きな差がある事がわかるだろう。ちなみに、風力発電の設備稼働率は20%~30%と太陽光の倍以上である。


地熱発電所(アイスランド)


 また、地熱発電は日本は世界的に資源量が豊富で、建設コストが問題なものの、(地中の温度は変動しないので)出力変動が非常に少なく設備稼働率は80%を超える。

 このように、風力や地熱は大きな可能性を秘めているのであり、それを引き出すために、今後規制緩和の動きが加速していくことは間違いない。





 



2013年11月16日土曜日

薬ネット販売解禁の裏側にあるもの 〜薬事法改正案を閣議決定〜  

ニュース概要

 政府は11月12日、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売で、一部品目を規制する薬事法改正案を閣議決定した。副作用の強い等の一部の薬を除き、99.8%の大衆薬のネット販売が解禁になることが決まった。なお、病院で処方される処方薬は未だネット販売されない見込み。


このニュースの背景(Why?)



背景1:国の経済成長戦略

 薬のネット販売は、安倍政権における成長戦略において非常に重要な位置づけとなっている。安倍首相は、2013年6月にまとめた「骨太の方針」に関する議論の中で、健康・医療、エネルギー、新規ビジネスの創出などの分野について、規制改革を行っていくことを示しており、その中で医薬品のネット販売解禁は一丁目一番地とされていた。

成長とは何か  
 なぜ成長戦略として薬のネット販売を解禁するかを説明する前に、触れるべき事は、「そもそも成長とは何か」ということだ。少なくとも安倍政権にとっての成長とは「経済的な成長」以外の何者でもない。経済を成長(活性化)させるためには、ともかくお金の流れをよくすることが第一に必要である(反対に“金の流れが悪い”とは、せっかく稼いでも貯金などにより使用しないこと)。具体的には、①企業が儲かる、②消費者がお金を使う、という2点を促進する事である。

誰が何の得をするのか  
 今まで薬局でしか販売されてこなかった医薬品がインターネットという販売手段を得る事は、①製薬会社並びに楽天等のネット企業は新しい販売チャネルおよび商品を得、②消費者はより薬という商品を簡易に購入することができ、購買活動を刺激する事が可能となる。







背景2:国の社会保障費の拡大

 以前の記事でも触れたが、日本は社会保障費の拡大により、「治療型」の医療から「予防型」の医療への転換を図っていると述べた。今回の規制緩和も国の医療費負担を軽減するという目論みが存在すると思われる。詳しくは以下のSo What ?の節で述べる。


背景3:社会情勢の変化

 今回の規制緩和を強くプッシュした楽天等のネット企業は、今後、医薬品ネット販売のニーズが高まる風潮を見越しているのだろう。例えば、少子高齢化が進む中で、家から出ずに薬を買いたいという高齢者の一定の需要は存在すると思われる。実際、“シニアマーケティング”としてワタミの宅配弁当をはじめ、様々な“宅配”サービスが増加している事と、薬のネット販売は無関係ではないだろう。

 同様に、安倍政権でも重要な戦略の一つとして掲げている“女性の社会進出促進”に伴い、働く女性が増えることで、買い物の負担をより軽減したいという需要が増える事が予想される。


背景4:医療大国を目指すための戦略

 安倍政権では、2013年6月に公表された政府の「日本再興戦略」には、「再生医療製品等を世界に先駆けて開発し、素早い承認を経て導入し、同時に世界に輸出する」事が掲げられている。京都大学の山中教授がノーベル賞を受賞したiPS細胞を始め、日本には優れた医療技術があるにもかかわらず、臨床試験等の規制が非常に厳しく、他国と比べ実用化に長い時間がかかる事が問題となっている。

 そのネックとなる法律が、今回の医薬品ネット販売について定めている「薬事法」である。国は、2030年に約1兆円と予想される再生医療市場において日本が優位に立てるよう、この薬事法の緩和に全力を注いでいる最中であり、薬のネット販売解禁はその影響も受けていると考えられる。


ニュース詳細↓

日本経済新聞(2013年11月13日)
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGC12012_S3A111C1PP8000/



このニュースが意味するもの(So What?)



処方箋もネット販売解禁か

 今回の規制緩和では、大衆向けの医薬品のみのネット販売解禁であったが、今後処方箋に関する緩和も少しずつ議論が進められるだろう。海外をみると、米国や英国、ドイツなどは既にネット販売が認められている。米国では主治医から薬局に処方箋をメールなどで送り、そこから薬が届く仕組みがある。

 薬を処方してもらうためだけに病院で長時間待つ煩雑さがなくなるほか、過度に病院に出向くことが減れば、医療費の削減にもつながるため、社会保障費の増大に悩む我が国では、大衆薬に続く処方箋のネット販売解禁は重要な可能性を秘めている。
 

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ネットの台頭と薬剤師の危機

 今回の規制緩和で決して見逃せないのが、情報提供手段としてのネットのポジションである。これまで「対面」による情報提供(実際説明を受けない場合も多いが…)を義務づけられていた医薬品が、インターネット上の文面だけで対面と同じレベルの情報提供と同義とされることは、ネットの社会的ポジションがこれまでより一段上がったと言っても過言ではない。

 これを恐れていたのは薬剤師連盟であった。現在の医療の現場では、薬の処方を決めるのは医師で、それを薬局で購入するときに情報提供を行うのが薬剤師である。もし薬を買う際に、ネット上に記載された情報だけで良いということを、国が認めてしまったとすれば、薬剤師に取っては「あなた方は要りません」と宣告されたことを意味する。

 実際、薬のネット販売の議論で最も反対を強く表明していたのは薬剤師連盟であり、経済評論家の池田信夫氏のブログによると、反対派の議員連盟に対して薬剤師連盟が3年間で14億円の政治献金(ロビー活動)を行っていたと言われている。氏の言葉を借りるならば、“ロビー活動は生産性の低い業界ほど強い”のだ。

池田信夫blog
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51877418.html

 したがって、今回のニュースは薬剤師市場、さらには大学の薬学部のあり方にも影響を及ぼしていくことが予想される。



2013年11月3日日曜日

ウイグル族の天安門突入事故から読み解く中国の宗教思想  

ニュース概要

 10月31日に、北京の天安門の前に車が突っ込み、巻き込まれた42人が死傷した。中国の警察当局はウイグル独立派組織による組織的なテロだと断定し、容疑者5人を拘束したと発表した。



このニュースの背景(Why?)

 11月9日から開催される、中国の中長期方針を決める共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)を前に、ウイグル族による開催地での暴動は、習政権に大きな衝撃を与えた。中国政府はさらなるウイグル族への取り締まり強化を宣言しているが、本稿では、そもそもなぜウイグル族と中国政府が喧嘩しているのかについて触れてみたい。



背景1:ウイグル族による独立問題 〜中国政府による宗教弾圧〜

  新疆ウイグル自治区は中国の西端に位置し、人口約2000万の半分がイスラム教徒のウイグル族で占められている特殊な地域である。中国が王朝だった時代から独立と従属を繰り返してきている歴史があり、1949年に中国共産党が政権を握ってからは「新疆ウイグル自治区」という名前で完全に併合されている。



図 新疆ウイグル自治区の位置
(引用)The PAGES(11月1日)
http://thepage.jp/detail/20131101-00000002-wordleaf


 中国はの建前上、宗教を否定する社会主義国家(※)なので、イスラム教を信仰するウイグル族の活動について常に監視下に置いている。また、現在中国政府は、新疆ウイグル自治区に大量の漢族を移住させ人口比を逆転させようとしており、政治や経済といった重要な分野では漢人が大きな影響力を持っている。このため一部の住民は中国の統治に対して強く反発し、中国からの分離独立を主張している。

 ウイグル族への圧力は年々強くなる一方で、自治区の治安悪化が問題になっている。一部の報道によると、今の自治区は、礼拝にいくだけで、コーランを持っているだけで、テロリスト扱いされる社会としている。小学校の児童に「ラマダンで断食をしないように」と教え、ウイグル族の学生が鉛筆削り用のナイフを持っているだけで、警察に尋問を受けるらしい。こんな息苦しい社会で暴動が起きない方が不思議である。

※用語:社会主義とは
 社会主義(socialism)とは、「社会の不平等をなくす」ために、私有財産を制限または廃止し、生産手段を(営利目的の)民間企業が持つのではなく、社会(国)が公共のために生産を行う社会を作ろうとする思想または運動のことである。欧米や日本と異なり、市場経済を国家によって統制しようという思想が柱となっている事が大きな特徴で、端的に言えば「大きな政府」を目指す社会である。


(背景1の背景:中国にはなぜ宗教がないのか)

理由1:マルクスによる宗教否定
 前段で、中国は社会主義国家であると述べた。19世紀、社会主義思想の父であるマルクスは、労働者が資本家の搾取によってどれだけ苦しい生活を強いられても、宗教はそれを肯定し、宗教を信じることのみに救いがあるとし、苦しさを精神力で克服させようとしていると分析した。
 その上でマルクスは「宗教は精神のアヘンである」と表現し、宗教がある限り、いつまでたっても労働者の苦しい生活は根本的に解決しないとして思想を築いたことが、社会主義国家一般の根本にある。


図 カール・マルクス(1818〜1883)
(引用)Wikipedia


理由2:国家全体の思想統制
 中国に宗教がないもう一つの理由は、社会主義思想および国に対する忠誠的な思想を統一する必要があるためである。

 もし国民が何らかの宗教に忠誠を誓っていた場合、国家への忠誠・思想の統一は難しくなる。なぜなら、宗教にとって国境も国家も必要ないからである。つまり、信者である国民達は、政治に耳を傾けなくても聖典に耳を傾ければよいというスタンスを取る事になる(もし、国自体を宗教で治めようとするのなら、中東の多数の国の様に、大統領の上の最高指導者を宗教指導者とする必要がある)。

 国民の自由を著しく制限する社会主義は、国民全体が同じベクトルを持っていないと実現は不可能であり、中国は教育やインターネットの検閲を含めて思想(愛国心)の統一を図ろうとしている。むしろ、社会主義思想や中国への愛国心自体が宗教のようなものと言えるだろう。

※ただし、同国にも思想集団化していない、いわゆる土着宗教は存在する。例えば、地元の廟などにお参りしたり、旧正月に場所で爆竹で祝うしきたり等は地域によって見られる。つまり、日本のご利益詣出や季節を祝うときのような対象になる神は存在すると言える。


背景2:資源獲得としての支配

 ウイグル自治区は、原油や天然ガスの埋蔵量が非常に豊富であり、中国としては手の内におさめたい重要な土地である。現在、中国石油天然気集団(CNPC)など漢民族が経営トップの国有石油大手が開発に当たっており、これもウイグル族が不満を抱く一因となっている(ウイグルには資源の恩恵が享受できていない)。経済成長で資源が慢性的に不足気味の中国は、エネルギー安全保障の観点からもウイグル族の独立を認めることができない。



ニュース詳細↓ 

日本経済新聞(10月29日) ウイグル族、漢民族支配に反発 天安門突入
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2903Z_Z21C13A0FF2000/

日本経済新聞(11月1日) 中国政府、ウイグル族締め付け 反発強まる可能性も
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM31044_R31C13A0FF2000/



このニュースが意味するもの(So What?)

 ウイグル族の暴動は自治区内では「毎日数十人」が地元公安当局に取り締まられる程に増えている。しかし、中国政府は懐柔策に出るどころか、さらに力でねじ伏せるようなスタンスを強化していくと筆者には思われる。現に政府は今回の事件を「テロ」と認識しているのに加え、中国にとってウイグル族の独立問題は、ウイグル - 中国間だけに留まらないスケールの大きい問題だからだ。

多数の少数勢力との緊張関係  
 中国にはチベットやウイグル等の少数派勢力が数十存在する。もし一つの勢力に妥協したり、独立を認めてしまえば、少数派が一斉に中国政府に反旗を翻す可能性があり、中国はよほどのことがない限り、彼らの独立を認めることはないだろう。

手出しが出来ない米国  
 また、今回の事件で着目すべきは、「世界の警察」として人種問題にうるさい米国が本件に関し、何のコメントもしていないことだ。米国にとって、中国がウイグルを弾圧しているのは知りつつも、ウイグルを支持できないのは、彼らが「イスラム勢力」だからである。「テロとの戦い」と称し、イスラム勢力全体に敵対している米国は、ウイグルを支持すれば国際的な(特に中国から“矛盾”を指摘する)非難を浴びかねない。したがって、国際組織もなかなか口出しが難しく、そうなれば中国は強攻策を緩める可能性は高くないだろう。

中東のイスラム勢力との協力に対する懸念  
 最後に、イスラム勢力であるウイグルは、中東の過激派勢力とも今後つながる(既につながっている)可能性がある。もしそのような強力体制が生まれれば、中国国内では本格的な内戦に発展しかねない。それは中国が最も恐れている事である。今後も中国政府とウイグル等の少数民族、そして世界のイスラム勢力を取り巻く緊張状態が緩む事はないだろう。