2013年7月28日日曜日

ヤマダ電機、太陽光発電で発電装置付き土地分譲事業に乗り出す

あらすじ(Why?)

 2012年7月より、固定価格買い取り制度が始まった。これは、企業や個人が再生可能エネルギーで発電を行った際、全量を電力会社に20年間(個人住宅は10年間)、高価格で買い取ってもらえるという、発電した者勝ちの制度である。

 太陽光発電には1 kWhあたり38円(今年度)という高い価格が設定されており、2012年度の太陽光発電装置の導入量は前年度の2倍近くまで増えた。では、誰がこんなに導入しているかというと、これまで発電事業とは縁のなかった「普通の企業」である。

 
 例えば、自社の工場の屋根に30 kW(一般住宅の屋根の広さで4 kWの規模)の装置を付けたとすると、放っておくだけで20年間にわたり毎年100万円程度の収入を得ることができるため、「太陽光発電を導入しない手はない」として発電事業に参入する事業者が急拡大している。

 さらに、大規模な土地を購入して太陽光パネルを設置し、数〜数十MWという規模(1 MW=330世帯分の電力)の発電&売電を行う、いわゆる「メガソーラー事業」がブームになっている(1 MWの装置ならば、初期コストはかかるが年間3.8億円程度の収入が得られ、すぐに投資回収可能)。ソフトバンクやオリックス、また金融機関や外資など、あらゆる企業がこの事業に参入し、(あまり報道はされていないが)現在日本では土地の奪い合いが起きているのだ。

 したがって、発電用の土地争いは今後さらに激化することが予想され、すでに条件の良い土地がなくなってきている。そのため今回ヤマダ電機は、あらかじめ土地を購入し、発電装置とセットで、メガソーラー事業をこれから行おう(けど土地がない…)という事業者に分譲する、という事業にトライするというわけである。


ニュース詳細↓

日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC2500F_V20C13A7EA2000/


今週の同じ背景を持つニュース↓

ミドルソーラーに脚光 メガより狭い用地で太陽光発電 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240O3_U3A720C1TJ2000/



このニュースが意味するもの(So What?)

 先述の通り、メガソーラービジネスは(土地を巡って)今後さらに競争が激化することが予想される。また、発電事業経験のないメガソーラー事業者を対象とした、メンテナンス・保守・運営ビジネスも拡大していくだろう。今週パナソニックがメガソーラーの運用事業に参入することが発表されている。

パナソニック、メガソーラー運用・遠隔監視事業に参入 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD230LM_T20C13A7TJ2000/

また、メガソーラーで発電した電力を貯めておくための蓄電池ビジネスも拡大している。

今週のニュース↓
日立化成、大容量リチウムイオン電池の生産能力4倍に
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2307Y_T20C13A7TJ2000/
 

 今後、好条件の土地が不足してくると、別の形態のメガソーラービジネスが生まれてくると思われる。一つは、上述のミドルソーラー事業。もう一つは屋根借り発電事業、つまり発電事業を行いたい事業者が、他社や一般住宅の屋根を大量に借り、賃料を支払う代わりに発電を行わせてもらうというビジネスである。

 まだ普及はしていないが、東京都や神奈川県等、発電のために公共施設の屋根を貸したい、という自治体も多数おり、今後ホットなビジネスになる可能性がある。

 ただし、固定価格買取制度では、太陽光の買い取り価格を高水準にするのは2014年度までとされており、各企業にとってはこの1,2年が勝負となることは間違いない。


 

トヨタ、新興国で部品から組み立てまでの一貫生産体制を整備

あらすじ(Why?)

 1973年に日本をはじめとする先進国が変動相場制(為替レートを外国為替市場における外貨の需要と供給の関係に任せて自由に決める制度)に移行して以来、製造業等の輸出産業は、業績が常に「円安」と「円高」の影響を受けることになった(それまでは1ドル=360円と固定されていた)。

 そして、クリントン政権下で、米国政府は製造業に注力するのはやめ、金融業とIT産業を急拡大させた。日本(第2次橋本内閣)もその流れを受け、「日本版金融ビッグバン」と呼ばれる制度改革が起きた。これは、「金融市場の規制を緩和・撤廃して、金融市場の活性化や証券業界のグローバル化をしましょう」というもの。すごく簡単に言うなら、「どの企業でも、どの個人でも、どの国のお金や株式も購入できる」ようになったということである。

 これによって、お金の流動性が増し、投資家の気分によって、つまり個々の小さな不祥事のニュースや災害・事件等によって、お金の流れが頻繁に変わる(不安定化する)ようになった。2008年のリーマンショックは金融化の行き着いた先である(詳細は後日)。

 この1,2年、円高で日本の製造業が国際競争力を失ったというニュース、また、安倍政権になって円安が進み、輸出産業が持ち直したというニュースを見た人は多いだろう。このような為替の不安定化は企業にとって大きなリスクである。「だったら為替の影響を受けないように、どうせ新興国で売るなら、そこで生産してしまおう」という潮流がこのところ見受けられる。もちろん、新興国の成長(内需拡大→中流階級の増加)もこのニュースの背景にあるのは言うまでもない。


ニュース詳細↓

日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO57683320U3A720C1MM8000/

この1週間で報道された同じ背景を持つニュース

スズキ、1000億円でインドネシア新工場 東南ア攻略拠点に 日本車生産、アジアが国内抜く 

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130728&ng=DGKDASDD260OR_X20C13A7MM8000
キリン、タイで「一番搾り」生産 東南アで初
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240MV_U3A720C1TJ0000/

内需主導、フィリピン高成長 アキノ政権、任期折り返す  1人当たりGDP、3000ドル間近 製造業育成急ぐ 

http://www.nikkei.com/article/DGKDASGM2304K_T20C13A7FF1000/


このニュースが意味するもの(So What?)

①グローバル化のリスク回避傾向
世の中はグローバル化の方向にあるのは言うまでもないことである。しかし、ここ数年世界経済が痛感しているのは、グローバル経済すなわち、市場や為替、投資資金が他国と互いに依存し合う経済は、地球の反対側で起こった事件が自分の国の経済にも影響を及ぼしてしまう、とてもリスキーなシステムであるということ。

 現在それを回避するために、各国政府、各企業が躍起になっている。今回のトヨタのように、その国で売るものを輸出ではなく現地生産しよう、というのも対策の一つ。

 同様の問題として、エネルギー問題がある。グローバル経済と同じく、先進国では資源を中東等の新興国に依存しているため、地政学的なリスクを追っている。遠くの国の戦争によって、エネルギー供給がストップするのを阻止するため、現在必死に自国内での再生可能エネルギーの拡大を図っているのだ(もちろん、温暖化等も再エネ促進の背景にあるが、忘れては行けないのはエネルギー安全保障の問題である)。

②国内物流業の縮小化
日本の製造業がどんどん海外に出て行くと、その影響を受けるのは国内の物流業である。国内の工場を海外に移すということは、原材料や製品等の運送が不要になるということ。
今後、国内物流業は海外での事業展開を拡大せざるを得ないだろう。

この1週間で報道された関連ニュース↓
日通、希望退職800人募集  国内物流縮小で 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD220DU_S3A720C1TJ1000/
SGホールディングス・グローバル/経済成長が見込まれるカンボジアで拠点開設
http://www.e-logit.com/loginews/2013:072314.php


2013年7月27日土曜日

郵政・アフラック提携 がん保険を共同開発

あらずじ(Why?)

 日本政府は7月23日、TPPへの参加を正式表明した。TPPとは、日本・米国を中心とした環太平洋地域による経済連携協定(EPA)のことである。

 TPPに参加するということは、米国を中心とした世界ルールに則って経済を回していくことで、一言で言えばグローバル化の加速を意味する。加盟国内で関税を撤廃するため、自国の製品の輸出額が拡大し、GDPが10年間で約2.7兆円増加すると見積もられている(因みに2012年の国家予算は90兆円)。
 
 その一方で、今まで国が保護してきた農業や医療保険などをTPPのルールに合わせて開放する必要がある。米国は日本に医療保険の市場開放をするようプレッシャーをかけてきており、また「(外資保険には高い関税をかけてるのに)政府が出資する日本郵政が自由に保険商品を出すのはフェアではない」と主張してきた。

 そして今回日本は、TPPの円滑な交渉をするため、米国に妥協する形で、「それなら日本郵政が米国保険(アフラック)と一緒に商品を出しましょう。」という話になったのである。


ニュース詳細↓

日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2601V_W3A720C1EE8000/
ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0FW21C20130726


このニュースが意味するもの(So What?)

①対米従属姿勢の国是
 戦後から現在に至るまで、日本はあらゆる面で米国の要求に従ってきた。安全保障条約、為替レートの変動相場制、郵政民営化に代表される規制緩和(民間開放)、そしてTPPへの加盟... 
 
 日本は「戦争をしない国」(憲法で定められている)として、国家の安全を米国に依存しているため、どうしても米国の機嫌を損ねる行動はできない。それにつけ込む形で、米国は先述のような要求を日本にぶつけ、「日本は米企業のためにもっと市場を開放せよ。」と言っているように筆者には見える。

 特に、昨今のような北朝鮮や中国との関係が悪化し、「万が一」の事態が懸念される状態では、一層米国との関係強化に努めざるを得ない。対米追従の傾向は今後も続いていくだろう。

②日本郵政グループの営利企業化
 小泉政権下で民営化を果たした日本郵政株式会社は、政府の資金が入っているとはいえ、ある意味他の金融機関と同じ立ち位置として市場競争に足を踏み入れた。
 今回、郵政は競争力のあるアフラックとの提携・商品販売を機に、新たな顧客の開拓や手数料収入の拡大を図り、早期の上場を目指すとしている。

そして、絶対見逃してはいけないのは以下のニュース↓
http://www.sankeibiz.jp/business/news/121219/bse1212190502002-n1.htm
 
 ゆうちょ銀行は今年から住宅ローンに参入した。それも(民間金融機関を補完するため)年収400万円以下の人への融資を対象とし、50年にわたる超長期ローンも請け負うとしている。つまり、米国で問題となったサブプライムローンと同じことをしようとしているのだ。

 これが米国からの圧力なのか営利目的なのかは定かではないが、少なくともこれまで民間金融機関が避けてきた商品ということは、相応に貸し倒れのリスクが高い案件であることは明らかである。

 一歩間違えれば、日本版サブプライム危機を引き起こしかねない。政府系企業の営利化への暴走は、国を揺るがす危険性を孕んでいる。



2013年7月20日土曜日

GMの復活も効果なく、デトロイト市が財政破綻

あらすじ(Why?)

 世界有数の「自動車の街」であるデトロイト市は、GMゼネラルモーターズの本社や大手自動車会社の工場拠点として、多くの雇用を生み出し栄えてきた。しかし、日本の自動車メーカーなどに押されて、1980年代以降は衰退が進み、2009年にはGMが経営破たんに追い込まれた。
 自動車産業を救済するためオバマ大統領は多額の公的資金を投入や税制優遇(巨額の法人税の支払い免除)を行い、自動車産業は息を吹き返した。
 しかしデトロイト市は自動車業界に対する法人税の免除により、税収が激減。ついに財政破綻に陥った。


ニュース詳細↓

日経新聞
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130720&ng=DGKDASGM19028_Z10C13A7FF2000
朝日新聞
http://www.asahi.com/international/update/0720/TKY201307200173.html

このニュースが意味するもの(So What?)

 量的緩和政策も功を奏し、米国経済は順調に回復しているように見える。実際、100万ドル(約1億円)以上の資産を持つ富裕層は12年時点で343万人と1年で12%も増えた。しかし、このような好調はウォール街での話。米国全体ではこの10年で貧困層が倍増しており、格差が急激に拡大している。今回のデトロイトの破綻は米国経済の影の部分を如実に表していると言える。