2014年4月27日日曜日

【書評】反貧困 (湯浅 誠著) 〜知られざる日本の貧困問題〜

 「日本は豊かな国だ」という考えがいかに軽率であることか。本書を読みながら、後頭部を殴られた思いがした。そして、これまでずっとメディアや政府が提示する日本の姿を妄信し、「リアルな姿」から目をそらして来たこと痛感した。

 もちろん、日本が“いわゆる”「豊かな国」であることは依然として疑いようがない。GDPは世界3位、サラリーマンの平均年収は2012年末の時点で408万円。これは世界の上位0.83%に入る(※)。世界の平均“年収”が約10万円であることを考えると、日本は世界的に“稼いでいる”国と言える。

 こうした統計データに頼るまでもなく、「日本が貧しい国だ」と思わせる要素は微塵もない。街を歩いていてもすれ違うのは“普通の”(中流の)人ばかりであり、どの場所もきちんと整備され、スラム街もなければ物乞いに出会うこともない。


貧困大国「日本」

 しかし、そんな日本の水面下で今、「貧困問題」が社会を蝕みつつあるのだ。上に示した「稼ぐ国」のデータからは想像はつかないかもしれないが、日本の貧困率はOECD諸国内で米国に次いで第2位。まさに「貧困大国」といっても過言ではない(※※)。

2014年4月20日日曜日

【エネルギー】ウクライナ危機が世界のエネルギー需給に及ぼす影響について

ニュース概要

 ウクライナ危機をめぐって米国陣営とロシアとの対立が激化している。それにより、エネルギーの流れが変わる可能性が出てきた。現在、米国内を中心に、「米国産の天然ガスや原油を欧州連合(EU)諸国やウクライナに供給し、各国のロシア依存を解消しよう」といった議論が展開されているのだ。

 米国内で起きたシェールガス革命によって、欧州内でガス需要が減少したため、同地域のロシアに対するガス依存度は下がりつつある。米国は自国の資源を欧州にさらに輸出し、ロシアを欧州市場から閉め出すことでロシアに打撃を与えようと動き出している。


ニュースの位置分析

 このニュースを、システムシンキングを使って、現在の世界のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。


図 世界のエネルギー情勢とウクライナ危機をめぐるシステムシンキング




2014年4月16日水曜日

【エネルギー】 エネルギー基本計画が閣議決定

ニュースの概要と所感

 政府は4月11日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。今回の基本計画で最も重要なポイントは、民主党政権下で掲げた2012年9月に掲げた「30年代に原発稼働ゼロ」を完全に撤回したことである。

 自民党は基本計画の中で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、長期的に活用していく方針を示した。同計画は、安全性が確認された原発から順次再稼働を進めるとしている。ただし、具体的な原発比率などの数値目標は記載されず、様々なステークホルダーに配慮したものと見られる。

 一方で、再生可能エネルギーは「2020年に13.5%、2030年に20%」という数値目標が掲げられ、今後も継続的に導入を促進する方向性を示した。

 ただし、依然として火力頼みの電力構成が続く内容となっており、原発の再稼働も含めると、再エネのトーンは震災直後のピーク時から縮小したと言える。



ニュースの位置分析

 このニュースを、現在の日本のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。
 日本を取り巻くエネルギーの潮流を関係ループ図で示したものが以下の図である。




2014年4月12日土曜日

ロジカルシンキングの限界と複雑な現象を読み解くためのシステムシンキング その2

 前回の記事では、世の中の複雑で動的な現象を読み解くには、「AならばBである」という一般的なロジカルシンキングでは難しいということをお伝えしました。今回は、「動的な現象の表現方法」について考えてみたいと思います。

 本稿では、いかのようなケースを想定してみます。
ハンバーガー業界では、近年競争が激化しており、業界トップのX社ですら売り上げの減少に苦戦していた。こうした事態に対処するため、X社では商品(ハンバーガー)の大幅な価格ダウンを行い、マーケットシェアを激増させ、売り上げも回復させた。

ロジカルシンキング

 まず、上記現象をロジカルシンキングで考えてみます。一般的に「売り上げ」は以下のように要素分解されます。


売上高=価格×数量



 
 この式とロジックツリーは、売上高は数量と価格という2つの変数(いわゆるMECEな関係な変数)によって決定されるということを表しています。

 しかし、これでは「価格を下げることにより、売れる数量、マーケットシェアが変化した」ということを表現できません。

 本来、売上高のロジックツリーには、要素間に以下の図に示すような因果関係があるはずです。



2014年4月11日金曜日

ロジカルシンキングの限界と複雑な現象を読み解くためのシステムシンキング その1

 1ヶ月以上も更新を怠ってしまいました。毎回読んで下さっている読者の皆さんにはお詫び申し上げます。

 さて、しばらく記事を書かなかった、いや書けなかったのは、仕事の繁忙期であったこと(言い訳がましく恐縮です)に加え、「あること」に対する疑問を払拭できなかったからです。

 その疑問とは、「各ニュースを単一のStream(背景)だけで理解してよいのか」ということです。
 本ブログ「NEWstreamer」では、例えば「薬のネット販売解禁」というニュースに対し、

Stream① 政府の経済成長戦略(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream② 社会保障費の拡大(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream③ 少子高齢化(→それにより、薬のネット販売解禁)
Stream④ 医療大国を目指すための戦略(→それにより、薬のネット販売解禁)

というように、「A → B(AによってBが生じる)」という、直線的かつ単純な論理展開で表現してきました。言い換えれば、いわゆる「静的」で、Streamの時間的変化を無視した表現とういことになります。もちろん今でも記事でお示ししてきた背景はいずれも的を外しているとは思っていません。