2014年4月20日日曜日

【エネルギー】ウクライナ危機が世界のエネルギー需給に及ぼす影響について

ニュース概要

 ウクライナ危機をめぐって米国陣営とロシアとの対立が激化している。それにより、エネルギーの流れが変わる可能性が出てきた。現在、米国内を中心に、「米国産の天然ガスや原油を欧州連合(EU)諸国やウクライナに供給し、各国のロシア依存を解消しよう」といった議論が展開されているのだ。

 米国内で起きたシェールガス革命によって、欧州内でガス需要が減少したため、同地域のロシアに対するガス依存度は下がりつつある。米国は自国の資源を欧州にさらに輸出し、ロシアを欧州市場から閉め出すことでロシアに打撃を与えようと動き出している。


ニュースの位置分析

 このニュースを、システムシンキングを使って、現在の世界のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。


図 世界のエネルギー情勢とウクライナ危機をめぐるシステムシンキング





 ごちゃごちゃしていて分かりづらいかもしれないが、ポイントは赤で囲った部分である。
 
 まず、米国では2008年頃から資源開発の技術革新によって、これまで経済的に取り出せなかったシェール(頁岩)中の天然ガスやオイルを産出できるようになり、特に国内のガス生産量が飛躍的に上昇した。ガス生産量増加の影響は主に以下の2つである。

 一つ目の影響は、米国内のガス価格が下がり、発電においてガスが中心となったため、石炭の需要が急減したことである。それによって、米国産石炭は欧州に輸出され、欧州の石炭価格が下がり、石炭発電の割合が増えたため、欧州では米国とは逆にガスの需要が急減した。

 それまでパイプラインでロシアからガスを輸入していた欧州各国にとっては、ロシア依存を脱却するために、非常に好都合なことであった。焦ったロシアは現在中国や日本を始めとするアジア向けに輸出を切り替えようとしている。

 もう一つの影響は、米国内で、ガスを輸入する必要が無くなったため、それまで米国向けに大量のガスを輸出していたカタールのような産ガス国のガスの行き場がなくなったこと。途方に暮れたカタールは、アジア、特に日本向けに輸出の方向転換をはじめた。

 ちなみに、震災後に停止した原発のエネルギーを賄ったのはカタールから購入したガスであり、日本に取ってはある意味タイミングが良かったと言える。

 このようなエネルギー情勢の中、ウクライナ危機が起きた。一方的にウクライナのクリミアに侵入したロシアは、世界各国から非難を浴びる。ロシアの国際社会における非行を米欧が許すはずもなく、冷戦時と同様に、ロシア・中国等の東側と、米欧日の西側陣営の対立はより一層深まった。

 ただし、そうした中でも、欧州は自国のエネルギー(ガスや石油)を未だロシアに大きく依存しているため、なかなか強い態度を取ることができない状況にある。そこで、有数の資源産出国の米国は、欧州のエネルギー(ガス・石油)依存度を下げるために一肌脱ごうとしているわけだ。

 ロシアは現在日本に歩み寄り、ガスや石油を売ろうとしているが、そこに米国が立ちふさがり、日本に資源供給をすれば、ロシアとしては問題である。

 そのような場合、中国がロシアからエネルギー購入量を増やし、ある意味「借りを作る」行動にでるかもしれない。いずれにせよ、米欧vs露中の対立は深まるだろう





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