2014年4月12日土曜日

ロジカルシンキングの限界と複雑な現象を読み解くためのシステムシンキング その2

 前回の記事では、世の中の複雑で動的な現象を読み解くには、「AならばBである」という一般的なロジカルシンキングでは難しいということをお伝えしました。今回は、「動的な現象の表現方法」について考えてみたいと思います。

 本稿では、いかのようなケースを想定してみます。
ハンバーガー業界では、近年競争が激化しており、業界トップのX社ですら売り上げの減少に苦戦していた。こうした事態に対処するため、X社では商品(ハンバーガー)の大幅な価格ダウンを行い、マーケットシェアを激増させ、売り上げも回復させた。

ロジカルシンキング

 まず、上記現象をロジカルシンキングで考えてみます。一般的に「売り上げ」は以下のように要素分解されます。


売上高=価格×数量



 
 この式とロジックツリーは、売上高は数量と価格という2つの変数(いわゆるMECEな関係な変数)によって決定されるということを表しています。

 しかし、これでは「価格を下げることにより、売れる数量、マーケットシェアが変化した」ということを表現できません。

 本来、売上高のロジックツリーには、要素間に以下の図に示すような因果関係があるはずです。




 そして、さらに大事なのは、「価格を下げ続ければ、売れる数量(マーケットシェア)が伸び続け、売り上げも上がり続けるのか」ということです。このように、ロジカルシンキングでは「どこまで続くのか」という時間的概念は考慮されません。


システムシンキング

 冒頭で述べたケースについて、時間的な変化を追っていきましょう。まず、価格を下げたことで最初に起こるのは、低価格によりX社のハンバーガーの魅力度が向上し、他のハンバーガー店に比べて売り上げが良くなることです。

 その結果、マーケットシェアが増え、販売数量が増加します。そして、最終的に売り上げも増えるという展開になります。販売数量が増加すると、規模の拡大による経済効果をもたらすため、商品原価も下げることもできます。

 このような好循環、すなわち動的な変化は以下のような「因果関係ループ図」を用いると非常に便利です。



 
 ただし、上の図の表現だけだとX社は永遠に売上を増加し続けることになってしまいます。この「低価格化→売上増」という好循環は、おそらくある一定の時期に限定されることは想像に難くないでしょう。

 X社のハンバーガーの価格が低下し、売れ行きが伸びる(食べる機会が増える)と、私たちは、同社のハンバーガーに飽きを感じ、買わなくなります。また、価格の大幅な低下は、ブランドイメージの低下にも直結します。

 したがって、ハンバーガーの低価格化は、マーケットシェア増加の即効薬になりましたが、時間が経つにつれて、売上(マーケットシェア)に悪影響が出始めることになります。
 「因果関係ループ図」を用いると、今述べた現象を以下のように端的に表現することができます。




 因果関係ループ図では、各現象(「ブランドイメージの低下」等)に対して影響を及ぼす様々な要因を矢印により、システム全体の動きを可視化することができます。これがシステムシンキングと呼ばれるものです。

 この時、矢印に「+」「−」を付けることで、矢印の発信元(「低価格化」)が、発信先(「ブランドイメージの低下」)を「加速」するのか「抑制」するのかを表します。さらに、「=」マークを矢印に付けることで、「時間的な遅れ」を表現することができます。

 この後のNEWstreamerでは、ニュースとその周辺分野の動きをこの「因果関係ループ図」を活用しながら解説していきたいと思います。


 

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