2014年4月16日水曜日

【エネルギー】 エネルギー基本計画が閣議決定

ニュースの概要と所感

 政府は4月11日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。今回の基本計画で最も重要なポイントは、民主党政権下で掲げた2012年9月に掲げた「30年代に原発稼働ゼロ」を完全に撤回したことである。

 自民党は基本計画の中で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、長期的に活用していく方針を示した。同計画は、安全性が確認された原発から順次再稼働を進めるとしている。ただし、具体的な原発比率などの数値目標は記載されず、様々なステークホルダーに配慮したものと見られる。

 一方で、再生可能エネルギーは「2020年に13.5%、2030年に20%」という数値目標が掲げられ、今後も継続的に導入を促進する方向性を示した。

 ただし、依然として火力頼みの電力構成が続く内容となっており、原発の再稼働も含めると、再エネのトーンは震災直後のピーク時から縮小したと言える。



ニュースの位置分析

 このニュースを、現在の日本のエネルギー情勢の中で、どこに位置するかを把握してみたい。
 日本を取り巻くエネルギーの潮流を関係ループ図で示したものが以下の図である。





 図中の赤枠で示した通り、現在の日本は、「再生可能エネルギーの導入が促進傾向」「火力発電の比率の拡大傾向」「原発再稼働に向けた動き」の3つが主な潮流として存在している。これらは最重要論点と換言することもでき、今回の「エネルギー基本計画」はこの3つのキーワードの上に腰を下ろしている。

 日本は、国際資源価格の不安定化化石燃料の海外依存等のリスクを抑えること、また二酸化炭素排出量の削減を目的として再生可能エネルギーを導入してきた。しかし、再エネの導入は政府の補助なしには不可能で、固定価格買取制度をはじめ、国の財政を圧迫している状況にある。

 一方、ガス発電や石炭発電等の化石燃料による発電は、福島の原発事故以降、それまで約30%を占めていた原発による電力を埋めるために、急速に導入比率が拡大した。それにより、海外からの燃料調達費は増す一方で、これらの負担は電力料金として、企業の経済にダメージを与えている状態にある。

 現政権である自民党は、民主党のような「国民の利益」重視ではなく、「企業活動」に軸足を置いた政党である。安倍政権の主導するアベノミクスは、国内企業の活性化をメインとする政策であるため、原発を再稼働することにより、企業の負担を緩和し、さらに国の財政を圧迫する燃料調達費を緩和しようというのが、今回のエネルギー基本計画で、原発の復権が宣言された理由である。

 とは言え、原発の再稼働のためには安全性評価を避けて通ることはできず、この手続きは一朝一夕でできないため、数年以上かけて徐々に原発比率を回復させていくと考えられる。したがって、再エネも未だシェアが3%程度に留まる中、短中期的にはしばらく火力発電を中心とする電源構成が続いていくだろう。

 
 

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