2013年10月29日火曜日

婚活から読み解くソーシャルストリーム  婚活イベント、国が支援 少子化対策で14年度から

ニュース概要

 内閣府は2014年度から結婚相手を探すために地方自治体が開く「婚活イベント」への支援を始める。少子化対策で地域の先進的な取り組みをモデル事業に選定する「地域・少子化危機突破プラン」に公募してもらい、選ばれた自治体には助成する。
 同プラン全体で2014年度予算の概算要求に約2億円を盛り込んだ。自治体による婚活支援は全国に広がっており、少子化対策に役立つと判断した。


あらすじ(Why?)

 “婚活”という言葉が流行りだしたのは筆者の記憶では2008年頃からである。2009年には流行語大賞にノミネートされるなど、今では一種の社会現象となりつつある。最初は「結婚が遅れた女性」の間だけの(切実な意味での)言葉だったのが、次第にビジネスの対象として広く普及し、今回のニュースのように、国家として支援するまでになった。

 本稿ではこの“婚活”現象の背景について考察してみたい。婚活ブームの背景には多様な現象が存在するが、筆者が重要と考えるのは以下の2つである。

背景1:個人主義の時代への移行

 一昔前(昭和)までは「家族」とか「地域」といった“集団”が機能していた時代だった。僕の両親がそうであったように、「お見合い結婚」というのは頻繁にに行われていたし、結婚に関して親が口出しするなんて当たり前だった。“口出し”というのはネガティブな意味だけでなく、30手前で独身の女性(男性)がいたら「周り(両親やご近所さん、会社の上司等)が何とかする」という風習のようなものが存在していた。

 しかし、平成に入り「個人主義」が加速する。個人主義とは、大まかに言えば「個人の意思を第一に尊重し、個人の責任を第一に重んじる」考え方の事である。換言すれば「家や学校、会社、地域といった大きなグループより、一人一人の利益が尊重される」ということである。


(背景1の背景)

 この背景を挙げればきりがないが、米国型の資本主義の流入が主な理由だろう。2000年代、特に小泉内閣以降、様々な規制(国の保護)が撤廃され“自己責任”、“実力主義”の風潮・考え方が強まった。会社の中での年功序列も緩和され、職業も“自己選択”が普通となった。国が将来どうなるか分からない時代、外部に頼るのではなく、「自分で何とかしなくてはいけない」という考え方が若者の中では一般的になった。

 そして結婚も個人主義の例外ではなかった。今では結婚は“自然とするもの”ではなく、自分で動いて(活動して)幸せを勝ちとるものとなった。「婚活」「就活」「離活(離婚活動)」「妊活」・・・2000年代後半からやたら「××活」の言葉が増えた。それは「活」という言葉に表されるように、「個人が動かなくては行けない」時代になった事を意味している。



背景2:女性の社会進出

 婚活現象におけるもう一つの背景には女性の社会進出が挙げられる。図1でオレンジ色で示した線が25〜44歳の女性の就業率である。働く女性の割合は、2000年から堅調に増加しており、厚生労働省によると2020年には73%に達するとしている。このように、「女性が働く」ことが当たり前になった事が彼女らの晩婚化を促進し、婚活現象に至ったと考えられる。


図1 女性の就業率の推移


(出典)総務省「労働力調査」


(背景2の背景)
 なお、女性の就業率の増加の背景には、政府の女性の就業支援策(育児休業制度や子育て支援策等)の寄与が大きいが、それだけではない。背景1で述べた理由による、昔のような「結婚こそが幸せ・ゴール」という価値観や、「男は仕事、女は家庭」という価値観の崩壊、それに伴う女性の高学歴化などが挙げられる。 
 また、見逃せないファクターとして少子高齢化がある。少子高齢化に伴い、国内の労働人口が減少し、GDP成長率も低下している。そのため、政府は国内の労働力を増やす為に、必死になって女性の労働力活用を促進しているのである。

その他の背景
 先ほど述べたように、婚活現象の裏側には様々な現象が複合的に作用している。全てをカバーしているわけではないが、筆者が本稿を記述するにあたり作成したマインドマップを参考までに以下に示す。

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ニュース詳細↓ 

東京新聞(10月17日)婚活イベント、国が支援 少子化対策で14年度から
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013101701001321.html

日本経済新聞(8月31日)婚活、国が応援 自治体イベントに補助金

http://www.lg-ppp.jp/?p=6022


このニュースが意味するもの(So What?)

 政府は少子化対策の一環(下記URLをご参考)として「婚活」を来年度から支援するとしているが、自治体では既に支援の動きが広がっている。内閣府が2011年に公表した調査では、婚活支援事業を実施していた都道府県は31、市区町村は552に上る。

 自治体が積極的に婚活を支援する理由は、「少子化対策」云々とは別の場所にあるように思われる。実際、地域内で結婚してもらうのはいろいろな意味でありがたいのだ。


 もちろん、多くの自治体では若者人口が減少し、さらには過疎化が叫ばれている時代、地域に定住してもらえる意味でのメリットがある。しかし、さらに重要なのは経済効果である。一組のカップルが結婚すると、当然結婚式場も儲かり、家具屋も儲かり、不動産も儲かり・・・というように経済波及効果が非常に大きいのだ。


 あくまで推測にすぎないが、国が支援する理由には、少子化という長期的な話だけでなく、短期的に効果が出る経済的なメリットも加味してこの政策を行っているのではないか。少子化の時代は結婚産業(式場)は下火と言われるが、これからは結婚式場単体ではなく、公共機関やイベント企画企業等との連携によって、様々なビジネス形態が生まれてく可能性がある。


(参考)少子化危機突破のための緊急対策(2013年6月7日)

http://www8.cao.go.jp/shoushi/01about/pdf/kinkyu.pdf


 

2013年10月19日土曜日

コンビニから読み解くソーシャルストリーム  高品質PB(プライベートブランド)を集客の目玉に コンビニ・スーパー、収益も改善

あらすじ(Why?)


 最近、コンビニエンスストアやイオン等のスーパーで“PB商品”をよく見かけるようになった。PB(プライベートブランド)とは、小売り・卸売り業者が自ら独自のブランド(商標)で販売する商品である。「自主企画商品」とも言われる。因みに、PBでない商品、つまり大手企業が製造した商品はNB(ナショナルブランド)と呼ばれる。

 イオンの「トップバリュー」、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」及び「セブンゴールド」が代表的であるが、ローソンやファミリーマート、スーパーではマルエツやイズミも力を注ぐ動きが見られる。

 最近のPBブームに共通するのは一点、“高品質志向”であるということだ。コンビニ各社がPBを立ち上げるのは、「(ユニクロのように)自社のネットワーク(流通網)を活かし、原料〜製造〜販売までの一貫体制を取る事でコストを低減するため」と思われがちである。確かに大きな理由の一つであることは間違いないが、もっと重要な要素が他にもある。PBの歴史を振り返りながら考察していきたい。

第1次PB時代
 日本で最初にPBが流通したのは1970年代の話である。ここでは「第1次PB時代と呼ぶ」当時は高度経済成長のもと、大規模生産体制によるNB(大手企業商品)の市場が拡大し、小売業としては苦労せず様々な商品を品揃えできるようになった。しかし、そのため小売り各社はNBの安売り競争に陥り、利幅がとれなくなるという問題を抱えていた。

 そこで、“ちゃんと利益を確保して、安く売る事を可能にする”ためにPBの存在がクローズアップされたのである。中でもダイエーはPBの代表的な1社で、同社が販売した5万円代の13型カラーテレビは大きな話題を呼んだ。

 しかし、その後バブル経済のもと、価格訴求型のPBはかつてほどの脚光を浴びなくなっていく。

 バブル崩壊後の不況下において、将来不安から消費者の節約意識は高まり、企業同士の安うり競争がどんどん激しくなっていった(デフレ)。そんな状況もあり、流通業界の大手企業はNBのイミテーション的な低価格型PBの開発にこぞって力を入れていった。イオンのトップバリュが代表的な例である。

第2次PB時代への突入
 しかし、そんな中、2007年にセブン&アイ・ホールディングスは、“クオリティ重視型”PBである「セブンプレミアム」を販売開始し、大ヒットを遂げる。

 同社はさらに、一段上の価値を追求した「セブンゴールド」を販売開始し、またもや成功をおさめる。

 このヒットの理由は、商品の価格(コストパフォーマンス)ではない。“新しいもの”と“(少し高くても)質の高いもの”を求める消費者のニーズを的確に読み取った戦略にある。実際、この消費者ニーズは少し前から別の形で兆候が現れていた。


日本人の“豊かさ”概念の変化
 1980年代初頭、日本人のマインドは大きなパラダイム転換期を迎える。“豊かさ”の概念に変化が起こったのだ。この時期、戦後初めて「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある 生活をすることに重きをおきたい」と答える人の割合が日本人の過半数を超えた(総理府統計より)。以来、この差は開き続けている。

 これが意味するのは、物質的に十分満たされている我が国では、「“同じような”モノが“安く”手に入る」だけでは今や私たちは満足する事ができず、“多少お金を払っても”、“他とは違う質の高い”モノを求める志向があるということである。昨今どのジャンルにおいても「オンリーワン」とか「プレミアム」とか「期間限定」という単語が使われる事があるが、これらは間違いなく不可分な関係にある。

 今回のニュースにあるローソンやファミリーマートの高品質PB事業への力点の変化は、セブンイレブンがある意味“発掘”した日本人の上記ストリームへのキャッチアップと言えるだろう。

ニュース詳細↓


日本経済新聞(10月16日)高品質PBを集客の目玉に コンビニ・スーパー、収益も改善 
ローソン、最高値の食パン 東急ストアは7割増の500品に 
  

このニュースが意味するもの(So What?)


  先に述べた日本人の「新しいもの」「高品質」志向は今後の企業動向を読み解く上で非常に重要なポイントとも言えるだろう。もちろん、(とりわけ「高品質」については)所得および景気の影響を大きく受けるため、不安定な潮流と言わざるを得ない。しかし、アベノミクスで消費者心理や購買力は改善傾向にある為、短中期的には「高品質」志向は継続していくだろう。

 なお、おそらく今後、小売り業界や流通業界でPBは増えていくだろう。本来小売り等の大企業は、大量に仕入れる代わりに仕入れ価格を安くする「スケールメリット」が使えるが、バブル以降再編(淘汰)が進んだ現在、大企業同士の戦いでは、スケールメリットは差別化要因とはならないからだ。今後はいかに「独自商品」、「新しい商品」を出すかの勝負となり、そのための手段としてPBが拡大していくと思われる。



(参考)

【書評】つながる脳 藤井直敬 (その2)


 突然ですが質問です。「あなたにこれから1000円を渡します。この1000円のうち、いくらでも良いので隣りの部屋にいる人に分け与えて下さい。残りはあなたの報酬になります。」と言われたら、あなたはどうしますか?いくらの金額を払いますか?

 これは脳化学では有名な実験です。よく考えれば分かる通り、これは相手からのレスポンスがないために非常に単純に見えますし、合理的に考えるなら、1円だって払う理由はありません。

 しかし、実際は実験の参加者は平均20%前後の金額(200円)を隣りの部屋の見ず知らずの人に支払います。支払うメリットは明らかにないのに、それでもゲームの参加者はいくらか支払ってしまうのです。

20%の希望

 一般にこの実験の結果は、実験での行動選択が自分の評判に影響を及ぼすことを心配しての結果と解釈されています。つまり、たとえ明確な他社がそこにいなくても、社会の中の自分に体する評判を保つという目的のためには、自分の分け前のうち2割程度のコストを払うことは価値があると思っているという事です。

 これは人の不合理な部分を説明する際に引用される事が多いのですが、逆の意味で、ヒトが他者との関係性を保つためのコストを支払う準備があることを示しています(2割というのは結構な割合です)。藤井氏は、ヒトが関係性維持の為に積極的に支払っても良いとする、この2割のリソースをうまくつかうことで、何らかの社会の仕組みができるのではないか、と述べています。

カネとホメ

 もう一つ興味深い実験が示されています。生理学研究所の定藤氏のグループで行ったfMRIの実験では、報酬として金銭(100円〜400円前後)を得られる課題社会報酬(ホメ)を得られる課題の2つを行い、“カネ”と“ホメ”それぞれの報酬を得た際の脳の動きを観察します。
 
 結果は驚く事に、金銭課題と社会的課題で活発化した脳の部分は全く同じ場所(基底核の線条体)だったのです。そして活動の強さは、誉められる課題の場合の方が金銭課題よりも大きいという結果でした。
 
 この実験が示しているのは、われわれの行動の動機づけとなっているカネの影響と、社会的な報酬(ホメ)の間には、共通の神経メカニズムが働いているということです。


この本のSo What ?

 現在私たちは、経済学でいう“合理的な経済人”つまり、金銭的な自己利益の最大化を図る個体モデルをベースにした資本主義社会に生きています。つまり、行動の動機・インセンティブはカネということです。

 しかし、上記2つの実験からわかることは、“他人の評価や承認”とういうのも金銭的価値と同様にヒトを動かすエンジンになりうるということです。むしろ、本来この2つのエンジンで回るべき社会が、片方(数字では表せない社会的承認)が軽視されているために、齟齬が起きているのかもしれません。実際、最も市場原理社会モデルが発達している米国では、人々はプライベート環境での問題が多発しています(犯罪率や50%を超える離婚率)。

 「いいね!」のFacebookやyahoo知恵袋などの最近の人気は、人々が本来的に持っているカネ以外のもう一つのエンジン、「社会から評価されたい」という欲求を如実に表しているのではないでしょうか。

【書評】つながる脳 藤井直敬 (その1)

 この本はMIT出身で、現在理化学研究所の脳科学者である藤井直敬氏が、「脳と社会性」について考察した本です。藤井氏は、なぜITは他の科学技術と異なり短期間で私たちの世界を劇的に変える事ができたのか、という疑問に対して、「ITがコミュニケーションの根幹に影響を与えるものであったから」と考えます。

 それに対して脳科学はそれまで実験室や論文の中だけの学問でした。また、さまざまな技術的、学問的な壁が存在し、発達が停滞していました。そんな中、藤井氏は脳科学を社会に対してつなげようと、「ヒトが持つ社会性」という切り口で研究を始めました。その概要が書かれたのがこの本です。以下、参考になった部分を取り上げていきます。


社会性に必要なのは「協調性」ではない

 藤井氏はこの本の中で、上下関係を持たない初対面の2体のサルを対面させ、社会性が形成されていく過程を観察した実験を行いました。そこで得られたことは、社会性の基本は「抑制」にあるということです。一度えさを争って、負けたサルはそれ以後“下位”である事を受け入れ、自分の情動的な行動を「抑制」し、相手(上位のサル)との関係性を保持し続けます。

 大事な事は、お互いの社会関係をベースに(相手に応じて)自分の行動を選択したということです。もっと分かりやすい言い方をすると、「強い」サルから「弱い」サルに以降した際、行動の「抑制」という機能が発現されるということです。

 一般的に社会性=協調性と考えられていますが、実際さまざまな実験から、サルやチンパンジーは他人同士の協調行動を取らない事が明らかになっています。それが出来るのはヒトだけです。つまり、「抑制」は進化的に見ても「協調性」より先に存在した社会的機能と言う事ができます。

余裕がないと社会性は生まれない

 この本の中で藤井氏は、社会性が生じるための基本には「余裕」が必要なのではないかと述べています。余裕とは、社会性によって、抑制を自分にかけても、自分自身に大きな損害が出ないことを指します。

 たとえば、誰でも、ものすごくお腹が減っているときや喉が渇いているときは、例えばお店の行列に我慢して並ぼうとは思わないですし、その程度が甚だしければ、抑制はとれてしまいます。抑制がとれた場合、皆自分の欲求を満たそうとして社会は混乱します。したがって、一定の「余裕」も社会性の基本と言えます。

 ここまでは“脳科学的に見た”社会性の基本を述べました。藤井氏はこれらをふまえて、人間の社会に関しても考察しています。これについては次回取り上げたいと思います。





2013年10月13日日曜日

【書評】伝え方が9割 佐々木圭一氏(コピーライター )




 「9割は言い過ぎでは・・」と思って読んだのですが、「伝え方が9割5部」でもおかしくないくらい、“伝える技術”の重要性について腑に落ちる本でした。

世の中には、なぜか、心に“刺さる”言葉があります。

例えば・・
「考えるな、感じろ」燃えよドラゴン
「死ぬことに意味を持つな。生きるんだ!」3年B組金八先生
「ちっちゃな本が、でかいこと言うじゃないか」講談社文庫広告
「別れることがなければ、めぐり会うこともない」西洋のことわざ
「マフィアが少年聖歌隊に見るほどの巨悪組織」ピーター・セラーズ(ピンクパンサー)
「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!」踊る大捜査線

 こういった人の心を動かすコトバについて、どんなテクニックが使われているのか、そして日々の生活や仕事で役立てるためにはどう使えばよいのか、について丁寧に解説されています。

少し本の内容に触れてみましょう。

 先に挙げた6つのコトバ(太字)をもう一度読んでみて下さい。一見、全く違います。単語はひとつも同じではありません。
しかし、この本の中で佐々木氏は以下のような“構造”に着目します。

「考える⇄感じる」
「死ぬ⇄生きる」
「ちっちゃな⇄でかい」
「別れる⇄めぐり合う」
「マフィア⇄少年聖歌隊」
「会議室⇄現場」

 別に「事件は現場で起きているんだ!!」だけでも伝わるのに、なぜか正反対の「会議室」を並べている。。この“比較対象”があることによって、コトバは不思議と私たちの心をグッとつかみます。佐々木氏はこれを「ギャップ法」を名付けています。

有名どころで言えば、他にも以下のコトバが「ギャップ法」を使った例になります。

  • 「No.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one」世界に一つだけの花
  • 「お前の為にチームがあるんじゃねぇ!チームの為にお前がいるんだ!!」『SLAM DUNK』安西先生
  • 「高く、堅い壁と、それに当って砕ける卵があれば、私は常に卵の側に立つ」村上春樹(エルサレム賞受賞スピーチ)


 では、日常生活で使うための練習をしてみましょう。以下の言葉をより“心に刺さる”コトバにするにはどうすればよいでしょうか。

①あなたが好き。
②これは、あなたの勝利だ。
③私は味方です。
④ここのラーメンはうまい。

 答えは以下になります。ポイントは、伝えたい事の前に正反対のワード(青字)を入れる事です。

嫌いになりたいのに、あなたが好き
②これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ。
③誰もがになっても、私は味方です。
④他の店がまずく感じるほど、ここのラーメンはうまい

 いかがでしょうか?伝えたい事の前にギャップを追加するだけで、伝わる重さが違いませんか?

 この「ギャップ法」は本の一例です。その他にもページをめくるごとに"目からウロコ"的な発見があるので、ぜひご一読されることをお勧めします。

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2013年10月12日土曜日

コンビニから読み解く"健康意識"と"少子高齢化"  健康志向コンビニ 全国に ローソン、5年で3000店展開

 コンビニエンスストア大手の2013年3~8月期連結決算が8日に出そろい、セブン―イレブン・ジャパンが収益力で他社を引き離す構図が鮮明になった。
 同日ローソンは健康をテーマに品ぞろえや店舗開発を進める新たな事業計画を発表。ファミリーマートはドラッグストアなどと一体化した店舗の強化を打ち出す。出店規模だけでない独自の店舗戦略でセブンを追撃する。



あらすじ(Why?)


 コンビニ業界のマーケティングに新しい動きが見られる。キーワードは「健康」のようだ。
 ローソンは新たな事業計画として、健康に配慮した商品をそろえる「ナチュラルローソン」を、今後5年間で3千店に増やす方針を発表した。5年後には全店の2~3割を占める見通しである。
 首位を独走するセブン―イレブン・ジャパンも栄養バランスを考慮した弁当の宅配を本格化し、さらに、ファミリーマートも調剤薬局との融合店の展開を始めている。



背景1:少子高齢化

 この「健康志向」の背景には、第一に"少子高齢化"が挙げられるだろう。現在日本の平均寿命は女性が86.41歳(世界1位)、男性が79.94歳(世界5位)である。これには医療の発達に加え、日本人の健康的な生活が起因している。また、仕事を引退した後の"セカンドライフ"を健康で充実したものにしたい・長生きしたいという意識も一昔前よりはるかに浸透している。
 若者人口が減少する中、コンビニ業界のマーケティングのターゲットは人口が多く、お金ももっている(であろう)シニア世代にシフトしつつある。そのマーケティングの切り口が、"健康"というわけだ。


図1 高齢化の推移と将来の人口推計
        (出典) 平成24年版 高齢社会白書



 なお、"健康"というキーワードはシニア層に向けてだけではない。女性に向けたワードでもある。少子高齢化による労働人口の減少を一つの原因として、女性の社会進出が促されている。これに伴い女性の所得・消費も増加する。加えて、「仕事もプライベートも充実させる」という"ワークライフバランス"という意識の浸透も"健康志向"を促進させているように筆者には思える。


背景2:予防重視の医療への変化

 近年、国の医療政策は「治療」を重視した政策(費用負担が中心)から、「予防」重視の政策に転換しつつある。例えば、生活習慣病や喫煙、食生活に対する啓蒙活動の強化が挙げられる(都道府県レベルで目標数値も設定している模様)。因みに"メタボリックシンドローム"という概念を導入したことも、この一環である。
 また、定期的な健康診断の義務づけなども「予防型」医療政策の重要なパートを占めている。

参考:厚生労働省  平成18年度医療制度改革関連資料 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/taikou03.html

 このように、現在国家レベルでの"健康"への意識改革が進行しつつあるのだ。最近喫煙者に加え、会社での喫煙スペースも減少しつつあるのは、国としての健康推進運動(喫煙の危険性に関する教育を含む)が少なからず作用しているのだろう。


(背景2の背景)

 このような、「治療」から「予防」への政策転換は、(個人的には賛成だが)必ずしも"国民の健康"を願う政府の気持ちが発端ではないであろう。おそらくキーファクターは「社会保障費の増大」である。
 
 日本の社会保障費は平成2年度の決算ベースで11兆5千億円(政策経費の29・4%)だったものが、25年度予算では約29兆1千億円まで拡大。これは、政策経費の54%を占める程の数字である。高齢化がこの先さらに進む中、治療費保証の低減はさけられない。そのため、できるだけ「治療」自体を減らすという意味で「予防」に注力するというわけだ。


同じ背景を持つ関連ニュース↓

日本経済新聞(10月9日)介護費用 総額に上限 軽度対象、15年度から 厚労省案、10年後に2000億円抑制
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO60949050R11C13A0MM8000/
産経ニュース(8月8日)官邸主導で「社会保障費」抑制 諮問会議で検討、27年度予算から実施へ
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130808/plc13080811300010-n2.htm


背景3:食品等のクオリティの飽和

 健康志向の背景にはもう一つ、食品全体のクオリティの向上が挙げられる。日本では、どれを(どの店で)購入しても最低限の味は担保されているので、差別化が難しく価格競争になってしまう。それの状態から脱するため、「味」や「価格」という切り口に加え、「健康(品質)」という新たな軸が食品業界に導入されたと思われる。
 
 この差別化方法は強力である。なぜなら、例えば「シチリア産のレモンを"使っている"」ならその商品の立ち位置が"使ってない"商品より少し上がるだけに過ぎない。しかし、「食品添加物を"使ってない"」ことを謳われると、それ以外のライバル商品は全て食品添加物を"使って"おり、"体に良くない"食べ物と聞こえてしまうからである。

 今やコンビニにおにぎりでもコーラでも、"保存料不使用"が当たり前になっている。我々を取り巻くこれらの表記が人々の意識に及ぼす影響は決して少なくないだろう。


ニュース詳細↓


日本経済新聞(10月9日)セブン快走、2社追撃 コンビニ3~8月は収益格差広がる
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASGD0804Y_08102013TJ0000

日本経済新聞(10月6日)健康志向コンビニ 全国に ローソン、5年で3000店展開 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGF0408J_V01C13A0MM8000/



同じ背景を持つ関連ニュース↓

日本経済新聞(10月5日)食品大手「1人前」競う シニア・単身に照準 味の素、鍋用調味料を増産 伊藤園はティーバッグ拡充 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD040OR_U3A001C1TJ0000/
産経ニュース(10月9日)小さいサイズのプチ家電が人気 おひとり様からシニア層まで
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131009/trd13100907300002-n1.htm



このニュースが意味するもの(So What?)


 人々の、特にシニア層の"健康志向"が浸透しているのだとすれば、今後はコンビニを含めた食品業界だけでなく、フィットネスクラブ等にもシニア層をターゲットとした動きが広がっていくだろう。

 図2に示すように、シニア層は人数が多いだけでなく、資産も他の世代よりも抜きん出ている。今回取り上げた「健康」というキーワードはシニアマーケティングの一つの切り口でしかない。現在多くの会社がシニア向けに旅行・学習・資産運用などのビジネスを開拓しており、"いかに高齢者にお金を使ってもらうか"を競い合っている。今後ますます拡大していくシニア向けビジネスから目が離せない。


図2 男女,年齢階級別1世帯当たり家計資産(単身世帯)-平成21年-




        (出典)平成21年度 全国消費実態調査

バイオマス発電とkindleの意外な関係 製紙 電力小売りに商機 王子、300億円かけ専用発電所 自由化にらむ

 製紙会社が発電事業を拡大する動きが活発になっている。王子ホールディングスは、2015年度までに約300億円を投じ、売電専用のバイオマス・水力発電設備を新増設する。日本製紙も、火力発電所を2~3カ所新設し、計40万キロワット程度の発電能力を確保する見込みだ。

あらすじ(Why?)


背景1:電力システム改革
 王子製紙や日本製紙が発電事業に参入するにあたりにらんでるのが、2015年から始まる電力システム改革である。
電力システム改革の主な内容は以下の2つである。

①電力の小売り自由化
②発送電分離
(これらに加え、①と②による新たな送配電網を中立的に管理する広域系統運用機関を設立する)

①は簡単に言えば、国民に対し「自分たちがどの会社から電力を買うか」を選べるようにすることである(選ぶ例として、例えば"ともかく料金が安い会社"や"再生可能エネルギーの電気を作っている会社"等)。

 現在は、電力供給を行うことの出来る会社は東京電力や中部電力を始めとする一般電気事業者など一部に限られる(特定規模電気事業や特定電気事業者などもあるが、ここでは詳しく説明しない)。要するに寡占市場というわけだ。これを、「どの会社でも発電すれば誰にでも電力を売れるようにする」のが電力の小売り自由化である。

②は電力供給を、発電・送配電・小売りという事業類型に分けることだ(それぞれのライセンスを作る)。現在は発電して人々に電力を届けるまでを、上記一般電気事業者等の発電事業者が一貫して行っている。この改革により、発電だけする会社や、送電しかしない会社一般家庭に電力販売のみ行う会社が新たに生まれることになる(もちろん全部行ってもよい)。

 本稿のニュースに関係があるのは、①の電力の小売り自由化の方である。現在、化石燃料価格の高騰や原発停止により、電気料金が上がっていることは周知の通りである。製紙会社などは工場内で大規模に自家発電(生産過程の副産物を利用したバイオマス発電等)を行っている。現在王子製紙は電力会社に売電しているが、①の改革により一般家庭に(より安価な)電力を供給することができれば、発電収益の拡大が見込まれる。

背景2:紙の需要低迷
 製紙会社が発電事業に乗り出すのは、本業である紙の販売が低迷していることも無関係ではないだろう。以下のグラフに見られるように、2008年のリーマンショック以来、紙の生産量は減少しており、回復することなく横ばいが続いている。不景気に伴う需要低迷に加え、昨年までは円高による輸入紙の増加にも影響を受けていた。このような中、生産量縮小により、国内の工場の発電設備の稼働率が低下している。それをうまく「電気を売るため」に活用しようというわけだ。


図 日本における紙の生産量の推移

       (出典)日本製紙連合会

背景3:電子書籍の台頭
 紙の需要低迷には景気や円高の影響に加え、電子書籍(およびタブレット)の存在が少なからず影響を及ぼしていることは否定できないだろう。社内の会議で紙による配布資料をやめ、iPadを用いる会社も増えている。電子書籍やタブレット端末の存在感が日に日に増していることに対し、製紙業界は一定の懸念を抱いていると思われる。


ニュース詳細↓

日本経済新聞(10月12日) 製紙 電力小売りに商機 王子、300億円かけ専用発電所 自由化にらむ 
http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD11061_R11C13A0EA1000/


同じ背景を持つ関連ニュース↓

日本経済新聞(8月20日)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD190PC_Z10C13A8MM8000/




このニュースが意味するもの(So What?)

 電力システム改革、つまり電気事業の自由化の進展をにらみ、異業種から電気事業に参入する動きは製紙業に限らず活発化している。上記記事によると年内にも100社を突破するとしている。

 安倍政権は、輸出産業が海外での競争力取り戻すため、円高の是正を実行した。これによる発電用の燃料価格(輸入品の価格)の増加、つまり電力価格の増加は必然であったと言える。さらに、固定価格買取制度などによる再生可能エネルギーの導入促進も電力価格を引き上げに大きく作用している。政府には、電気事業の自由化により様々な企業の市場参入・競争を促すことで、日本の電力価格を下げるという目論みがあると思われる。

 また、同じ"電気に係るコストを抑える"軸で考えると、電気を使う量を少なくする"省エネ"への政府の取り組み、そのような(節電等の)サービスを行う企業の動きも活発化していくだろう。