2014年9月30日火曜日

環境・エネルギーと世界情勢のトレンドを把握するために役立つサイトまとめ

 世の中の動きを理解するためには、まずは個々の出来事を「知る」ことからはじめなくてはいけない。筆者のようにエネルギー関連の仕事をしていると、世界のエネルギートレンドを把握するためには、新聞だけでは足りず、様々な情報源から「質の高い」情報を入手することが必要となる。本稿では、世の中全体の動きと、環境・エネルギー分野の動向を知るために有益なニュースサイトをまとめてみた。



ニュース全般


日本経済新聞 http://www.nikkei.com/#!/


 ビジネスパーソンとして最も代表的とも言える情報源。他の新聞紙に比べ企業情報やマーケット情報が充実しており、お金や各プレーヤー(企業)の動向を把握することができる。


Bloomberg 日本語版 http://www.bloomberg.co.jp/news/markets/energy.html 


 Bloombergは、経済・金融情報の配信、通信社・放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社である。世界各国の経済、投資、エネルギーに関するあらゆるニュースを日本語でも読むことができ、「海外目線」での「海外動向」を把握することができる。


ロイター通信 日本語版 http://jp.reuters.com/


 ロイターは全世界に通信網を持つ英国の通信社であったが、2008年にカナダのトムソンに買収され、現在はトムソン-ロイターとして学術情報、知的財産、ライフサイエンスに関する情報発信を行っている。上述のBloomberg同様、「海外目線」でのあらゆる分野のニュースを読むことができる。エネルギーというカテゴリーはないが、定量的なデータやマップを多く用いており、非常に理解しやすいサイトとなっている。


 日本をより相対的に、また客観的に見るために、海外の国のニュースを読んで、「日本がどのように見られているか」を知ることは重要である。インターネット上には、日本語で読める各国内の情報誌が複数ある。もちろん、毎日読むことは難しいが、時々目を通すだけでも勉強になる。
 例えば、元日銀総裁の白川方明氏は、日本国内ではあまり評価されていない一方で、海外では比較的高く評価されているなど、国内の報道に踊らされないためにも役に立つ。

米国

The Wall Street Journal 日本語版 http://jp.wsj.com/home-page


 ダウ・ジョーンズ社が発行する国際的な影響力を持つ日刊経済新聞。有料だが、概要(一部)は無料で読むことができる。見出しを一読するだけでも、世界の何が注目されているかを把握することができる。


中国

人民日報 日本語版 http://j.people.com.cn/


 中国共産党の日刊機関紙の日本語ニュースサイト。


韓国

朝鮮日報 日本語版 http://www.chosunonline.com/news/index.html


 韓国最大の発行部数を誇る朝鮮日報の日本語ニュースサイト。


ロシア

ロシアの声 日本語版 http://japanese.ruvr.ru/


 ロシア国営ラジオ局の日本語ニュースサイト。




環境・エネルギー


環境ビジネス http://www.kankyo-business.jp


 環境エネルギー分野のビジネスに関する代表的な情報誌。再生可能エネルギーから廃棄物、省エネなど、幅広い分野に置ける政府や企業の動向を知ることができる。主に国内ニュースが中心。有料会員になるとトップランナーや有識者による質の高いコラムを読むことができる。

 環境・エネルギーの情勢を理解する上で、やはり国内だけではなく、「世界全体」の動きを知る必要がある。環境やエネルギー分野の国際動向を日々発信する優良サイトを以下にまとめてみた。


Renewable Energy World  http://www.renewableenergyworld.com/rea/home


 再生可能エネルギーに特化した国際情報サイト。一般的なニュースサイトと異なり、「再エネ」ではなく、「Solar」、「Wind」、「Geothermal」といった細かなカテゴリーで詳細なニュースを提供している。「News」だけでなく、「Opinion」や「Technology」など非常に情報量が多いサイトだが、ホームページの「News」欄だけ毎日眺めるだけでも、各エネルギーに関する動向を把握するのに役立つ。


Bloomberg(Energy) http://www.bloomberg.com/sustainability/energy/


 BloombergのHPでは金融、投資、経済に関する詳細なニュースを発信しているが、エネルギーに関するニュースも一読の価値がある。英語版のHPでは先に述べた日本語版ではピックアップされていない重要なニュースが数多く掲載されている。内容としては、再生可能エネルギーよりも化石燃料が多い。経済情勢と絡めた各国の思惑から論じることが多く、他のニュースサイトより「深く」エネルギーを読むことができる。


EIA(米国エネルギー情報局) http://www.eia.gov/todayinenergy/


 米国政府機関であるEIAが発信するニュースページ。米国内だけでなく、世界各国のエネルギーに関する政府の重要な決定や、動向を知ることができる。全文を読まなくても分かりやすいグラフ等でビジュアライズされており、非常に理解しやすい。ちなみにEIAは世界各国のエネルギーに関する概要および統計を公表しており、各国のニュースと併せて読むとためになる。


Forbes http://www.forbes.com/energy/


 Forbesはニューヨークに拠点をもつ世界有数の経済誌。経済情勢からスポーツや音楽まで様々な情報を当サイトでは掲載している。エネルギーに関しては、世界の主なプレーヤーの動き等のプレスリリース的なニュースだけでなく、最近のトレンドについても発信している。本稿で取り上げている英語サイトのうち、最も英語が平易で読みやすい。


Green Car Congress http://www.greencarcongress.com/


 主に次世代自動車に関する技術的な動向を掲載しているサイト。かなりマニアックな情報が多い上、英語の文章としても難解であるが、他では決して拾わない詳細な動きを迅速にピックアップしている優れたサイト。自動車のテクノロジーだけでなく、再エネ全般、政府の重要な決定や国際機関の研究成果までカバーしているので、興味のある分野についてカテゴリー別に検索して情報を仕入れるのが良い。


IEA(国際エネルギー機関) http://www.iea.org/newsroomandevents/


 世界のエネルギー情勢を知る上で最も重要な組織と言っても過言ではないIEAのHP。「Press releases & top news」では、毎月2本程度、世界のエネルギー情勢に関する記事が発表されるので、短期的な動向を知るのに便利。IEAは、業界では最も信用力のあるといえる「World Energy Outlook」をはじめ有料のレポートを多く発表する一方で、各国のエネルギー動向やトピックごとの情勢、各種統計など、無料でもかなり質の良い情報を提供している。


World Resources Institute  (世界資源研究所:WRI) http://www.wri.org/


 WRIは、ワシントンDCに拠点を有する地球の環境と開発の問題に関する政策研究と技術的支援を行う独立機関。国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行などの共編により、2年に一度「世界の資源と環境(World Resources)」を出版している。「News」では毎月1〜2本程度、気候変動から貧困まで幅広いトピックについて、短期的なトレンドを発表している。



 上述のページにどれほど重要な情報が載っているとしても、英文ではなかなか抵抗感があるし、時間もかかると言う人も少なくないだろう。以下のサイトは、海外ニュースを迅速に日本語訳して発表している。


EICネット http://www.eic.or.jp/


 一般社団法人の環境イノベーション情報機構が運営するサイト。国内外の環境・エネルギー分野の日々のニュースが公表されている。海外ニュースについては、4〜5行で要約されており、英語のサイトをあちこち読む余裕がない時に、概要を把握するのに役立つ。


環境展望台 http://tenbou.nies.go.jp/


 一般社団法人国立環境研究所が運営するサイト。EICネットと同じく国内外の日々のニュースを掲載している。再エネよりは、地球温暖化や生物多様性等の「環境」分野の情報が多い。同サイトでは各環境技術やトピックに関する概要ページがあり、一読するだけでも勉強になる。



その他


経済レポート http://www3.keizaireport.com/

 こちらはニュースではないが、各調査会社や政府が発表するレポートを入手することができる。情報の迅速性が非常に高く、「よくこれを見つけたな」と思うくらい、幅広い情報源から有益なレポートをピックアップしている。日々のニュースではなく、より編集された知識を手に入れるために大変重要なサイト。




 もちろん筆者も毎日すべてのサイトに目を通しているわけではないが、時間を見つけてできる限り様々な情報を得るように努めている。
 記事を読むことよりもはるかに重要なのは、ニュースを読んで「何を考えるか」であり、本稿で紹介するのは、「自分で考える」きっかけを提供する情報源という位置づけであることを強調したい。


2014年6月15日日曜日

教養は「何のため」か

 前回、 教養に関する3つの疑問 ①「なぜ学ぶ必要があるのか」、②「どうやって身につければよいのか」、③「そもそも教養とは何か」のうち、③について、教養とは「『人間性』や『人格』と結びついた知識である」ということを述べた。

 本稿では①「なぜ教養学ぶ必要があるのか」について、「ビジネスマンにとっての意義」という切り口で考察してみたい。


(出典)http://free-photos.gatag.net/tag/%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8


2014年6月4日水曜日

「教養とは何か」について考えてみる


(出典)GATAG
http://free-photos.gatag.net


 「教養を身につけた方がいい」と言われたことはないだろうか。決して注意喚起という意味ではなくても、「教養の重要性」を語る声は、大学時代の学部の先生や会社の上司、NHKや書店の平積みの本の中から日常的に聞こえてくる(少なくとも筆者の周りでは)。

 ありふれたメッセージであるにもかかわらず、教養の習得をリコメンドされたときに、「よし、明日から教養を身につけよう!」と昂揚する人は希有である。おっしゃる意味がよくわからないからだ。

 一般的に、脈絡なく「教養を身につけろ」と言われた場合、意識・無意識は別として次の3つの疑問が生じる。「なぜ?」「どうやって?」「そもそも教養って何?」。。


教養とは何か


 「そもそも教養って何?」という疑問は特に重要である上、難しい。「教養」という言葉自体、「愛」とか「幸せ」と同じようにあまりに漠然としている。具体化するために質問を少しずらして「『教養のある人』とはどんな人か?」について考えてみる。


教養のある人とはどんな人か

 やや主観的ではあるが、例えば普通の会社のサラリーマンでいながら、能や茶道に精通していたり、ローマ帝国の五賢帝をそらで言えたり、休日にアリストテレスの『ニコマコス倫理学』を読んでいるような「幅広い知識」を持った人は「教養のある」人と認識される可能性が高い。

 しかし、日本語の権威である広辞苑によると「幅広い知識」だけでは足りないらしい。

2014年5月23日金曜日

C世代に迫るスマホ・ネット依存症の脅威 その2

 前回は、現代の日本社会に生きる人々、とりわけC世代に欠かせないインフラとなったスマートフォンとインターネットに潜む「依存」の危険性について述べた。本稿では、パソコンやスマホが我々の「脳」に与える影響について考察したい。


ネットとスマホが与えるマイナスの影響

 現在、各国の研究者の間でパソコンやスマホが脳にもたらす影響について研究が進められているが、主なものは以下の3つである。

2014年5月14日水曜日

C世代に迫るスマホ・ネット依存症の脅威 その1

 最近「C世代」という言葉をよく耳にするようになった気がする。以前も本ブログにて記事を書いたが、「C世代」とは、常に仲間(Community)繋がって(Connected)いて、会話好き(Communication)で、貢献意欲が強く(Collaboration)変化を求め(Change)創造性豊かな(Create)10代、20代の若者たちを指す。

 他の世代よりも、はるかにスマホやネットなどのITスキルが高く、それを活かした行動力やコミュニケーション力が光る世代だが、今回と次回では、C世代が抱える闇の部分に触れてみようと思う。



(出典)http://jp.freepik.com/free-photo/smartphone_527946.htm

 さて、今週の日経新聞に掲載された以下の記事を読んでもらいたい。

2014年5月4日日曜日

【書評】チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド by 東浩紀 〜 チェルノブイリの事例から福島第一原発の「観光地化」を考える 〜


(出典)東京電力

「福島第一原発観光地化計画」という言葉をご存知だろうか。

 あの禍々しい事故から3年、東京電力が未だ後処理の目処すら立たない中、「福島第一原発を観光地にしよう」という動きをしている人たちがいる。

 著名な思想家・作家・評論家の東浩紀氏らは、数年前から水面下で構想を組み立てている。

福島第一原発観光地化計画 Facebookページ
https://www.facebook.com/fukuichikankoproject

 「事故現場を見せ物にするな」と思うかもしれない。また、「観光地にするまでもなく、あの事故を忘れることなどあるものか」と言う人もいるだろう。

 しかし、当事者でなければ、どんな歴史的事故でも一定期間経てば記憶から消去されてしまう。実際、1986年に福島と同じ歴史的原発事故が発生したチェルノブイリでも、約30年経過した今、多くのロシア人とウクライナ人の記憶から徐々に薄れつつあるようだ。


チェルノブイリの「今」

 その現象に歯止めをかけるため、チェルノブイリ市が3、4年前から始めたのは原発周辺地域の観光地化である。

2014年4月27日日曜日

【書評】反貧困 (湯浅 誠著) 〜知られざる日本の貧困問題〜

 「日本は豊かな国だ」という考えがいかに軽率であることか。本書を読みながら、後頭部を殴られた思いがした。そして、これまでずっとメディアや政府が提示する日本の姿を妄信し、「リアルな姿」から目をそらして来たこと痛感した。

 もちろん、日本が“いわゆる”「豊かな国」であることは依然として疑いようがない。GDPは世界3位、サラリーマンの平均年収は2012年末の時点で408万円。これは世界の上位0.83%に入る(※)。世界の平均“年収”が約10万円であることを考えると、日本は世界的に“稼いでいる”国と言える。

 こうした統計データに頼るまでもなく、「日本が貧しい国だ」と思わせる要素は微塵もない。街を歩いていてもすれ違うのは“普通の”(中流の)人ばかりであり、どの場所もきちんと整備され、スラム街もなければ物乞いに出会うこともない。


貧困大国「日本」

 しかし、そんな日本の水面下で今、「貧困問題」が社会を蝕みつつあるのだ。上に示した「稼ぐ国」のデータからは想像はつかないかもしれないが、日本の貧困率はOECD諸国内で米国に次いで第2位。まさに「貧困大国」といっても過言ではない(※※)。