2014年5月14日水曜日

C世代に迫るスマホ・ネット依存症の脅威 その1

 最近「C世代」という言葉をよく耳にするようになった気がする。以前も本ブログにて記事を書いたが、「C世代」とは、常に仲間(Community)繋がって(Connected)いて、会話好き(Communication)で、貢献意欲が強く(Collaboration)変化を求め(Change)創造性豊かな(Create)10代、20代の若者たちを指す。

 他の世代よりも、はるかにスマホやネットなどのITスキルが高く、それを活かした行動力やコミュニケーション力が光る世代だが、今回と次回では、C世代が抱える闇の部分に触れてみようと思う。



(出典)http://jp.freepik.com/free-photo/smartphone_527946.htm

 さて、今週の日経新聞に掲載された以下の記事を読んでもらいたい。


スマホ断ち1週間合宿 小中高生向け  
 スマートフォン(スマホ)やパソコンに夢中になって健康や学業に支障をきたす子供が増えていることから、文部科学省はインターネットを使える環境から離れる「合宿」を今夏にも開催する。対象は小中高生。青少年向け施設での1週間ほどの集団生活を通じ、スマホなどに依存しないよう指導する。 
 合宿の運営を委託する教育関連団体を5月中に決め、6月以降に参加者を募集する。定員などは未定で、今年度は夏休みや冬休みを中心に複数回開く見通し。(中略)プログラムでは自然体験やスポーツのほか、ネット依存が健康に及ぼす影響の講義や臨床心理士らによるカウンセリングも行う。
(2014年5月10日 日本経済新聞より)


スマホ依存症とは何か

 「携帯電話ごときで何を大げさな…」と思う人も多いだろう。しかし、昨今のスマートフォンやインターネットの爆発的な普及に伴い、スマートフォンやインターネットから自分自身が支配されてしまう「スマホ・ネット依存症」が世界中で問題となっているのだ。

 会社に着いてスマホを忘れたことに気づき、メールが来ていないか不安を感じることは普通の人でもよくあることだ。しかし、中には不安を超えて恐怖感を覚えたり、震えや心拍数の変化等の生理的症状が現れる人もいる。彼らは「つながらない」ことに耐えられないのだ。このような症状を「スマホ・ネット依存症」と言う。

 「そもそも依存症とは何か」ということについて、米国では精神科医の「依存症」に関する判断基準は大きく分けて次の3つとなっている。

 ①自分の意思でやめられない行動かどうか
 ②その行動は良くない結果を招いているかどうか
 ③良くない結果を分かっていてもその行動が続くかどうか。

 言うまでもなく、これはアルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症の判断基準と同じである。以下に記すように、今世界で話題となっている「スマホ依存症」は紛れもなくこの定義に合致するのであり、現代の技術が生んだ新たな精神病と言っても過言ではない。


スマホ依存症の深刻化

 Googleの調査によると、日本のスマホ普及率はまだ25%程度。そのため、スマホ依存症についてそれほど注目されていないが、スマホ普及率50%を超える米国70%を超える韓国ではある種の社会問題と化しているのが現状である。

(参考)Googleによるモバイルマーケティングに関する調査結果「Our Mobile Planet」
http://think.withgoogle.com/mobileplanet/ja/


 韓国政府が行った最近の調査では、10代の若者の4人に1人が中毒的な依存状態に陥っており、成人のスマホ依存の2倍に上ることが分かった(本調査でいう中毒とは、1日7時間以上携帯電話を使用し、端末を奪われると禁断症状が出ることを指す)。

 また、韓国は数年前に、ネット依存症を公衆衛生上の最大の脅威であると宣言しており、今では、10歳以上の全ての子供にネット依存度を測る検査を実施している。

 米国では、精神科医が使う最新の診断マニュアルには、既に「インターネット依存」が登録されている。米国を先頭に、最近先進国の精神科医および政府機関の間で、スマホ等のハイテク機器依存に対する対処方法の確立が急がれている。今年はインターネット依存症に関する初の国際会議がミラノで開催されている。

 日本もようやくキャッチアップしようとしていることが、冒頭の日経新聞の記事に示した文部科学省の行動からわかる。

 本稿の後半では、スマホ依存症が生じるメカニズムに言及しよう。

スマホ依存のメカニズム

 依存症というと、アルコールや薬物、ギャンブル依存が頭に浮かぶ。これら依存症の場合、どん底の状態はとても分かりやすい。しかし、スマホ依存は普通そこまで落ちることはなく、依存状態にあるという現実を認識できない場合が多い。

 それでも、依存のメカニズムはアルコール依存だろうがスマホ依存だろうが変わらない。そのメカニズムとは、「快楽中枢に対する強い刺激が予期せぬ間隔で繰り返される」ことである。

 例えばギャンブル依存では、スロットマシンのレバーを引くだけでは脳の快楽中枢は活発化せず、快楽物質であるドーパミンが分泌されることはない。しかし、「ちょっとした成功体験」が何度も繰り返されると、人は期待を膨らませ、やがて病み付きになる。

 スマホ依存もこれと同じである。電源を入れると、たまに素敵なメールが届いていたり、Facebookの投稿に「いいね!」が押されていたり、自分のツイートがリツイートされていたりする。だから気になってまたチェックしたくなる。

 このような「快感」の不定期な繰り返しにより、知らず知らずのうちに「スマホ依存」および「ネット依存」状態に陥ってしまう。これは、「C世代」の若者が自ら抱える罠と言えるだろう。

 以前のC世代に関する記事でも書いたが、我々C世代は常に仲間と“繋がっている”状態を日常としている。そして、これはスマホとネットというインフラが成せる技である。

 C世代が持つこの性質(インフラを含む)は言うまでもなく世代としての大きな強みであり、これからも活かすべきである。しかし、いつでも誰とでも繋がれるという「光」が、無意識下の「ストレス」や「依存状態」といった「陰」の部分を生み出すことを認識しておく必要があるだろう。

 次回はスマホやネットの使用が我々の脳にどのような影響を及ぼすのかを考察してみたい。
 
(参考)Newsweek (2014.5.20)

 

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