2013年10月19日土曜日

コンビニから読み解くソーシャルストリーム  高品質PB(プライベートブランド)を集客の目玉に コンビニ・スーパー、収益も改善

あらすじ(Why?)


 最近、コンビニエンスストアやイオン等のスーパーで“PB商品”をよく見かけるようになった。PB(プライベートブランド)とは、小売り・卸売り業者が自ら独自のブランド(商標)で販売する商品である。「自主企画商品」とも言われる。因みに、PBでない商品、つまり大手企業が製造した商品はNB(ナショナルブランド)と呼ばれる。

 イオンの「トップバリュー」、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」及び「セブンゴールド」が代表的であるが、ローソンやファミリーマート、スーパーではマルエツやイズミも力を注ぐ動きが見られる。

 最近のPBブームに共通するのは一点、“高品質志向”であるということだ。コンビニ各社がPBを立ち上げるのは、「(ユニクロのように)自社のネットワーク(流通網)を活かし、原料〜製造〜販売までの一貫体制を取る事でコストを低減するため」と思われがちである。確かに大きな理由の一つであることは間違いないが、もっと重要な要素が他にもある。PBの歴史を振り返りながら考察していきたい。

第1次PB時代
 日本で最初にPBが流通したのは1970年代の話である。ここでは「第1次PB時代と呼ぶ」当時は高度経済成長のもと、大規模生産体制によるNB(大手企業商品)の市場が拡大し、小売業としては苦労せず様々な商品を品揃えできるようになった。しかし、そのため小売り各社はNBの安売り競争に陥り、利幅がとれなくなるという問題を抱えていた。

 そこで、“ちゃんと利益を確保して、安く売る事を可能にする”ためにPBの存在がクローズアップされたのである。中でもダイエーはPBの代表的な1社で、同社が販売した5万円代の13型カラーテレビは大きな話題を呼んだ。

 しかし、その後バブル経済のもと、価格訴求型のPBはかつてほどの脚光を浴びなくなっていく。

 バブル崩壊後の不況下において、将来不安から消費者の節約意識は高まり、企業同士の安うり競争がどんどん激しくなっていった(デフレ)。そんな状況もあり、流通業界の大手企業はNBのイミテーション的な低価格型PBの開発にこぞって力を入れていった。イオンのトップバリュが代表的な例である。

第2次PB時代への突入
 しかし、そんな中、2007年にセブン&アイ・ホールディングスは、“クオリティ重視型”PBである「セブンプレミアム」を販売開始し、大ヒットを遂げる。

 同社はさらに、一段上の価値を追求した「セブンゴールド」を販売開始し、またもや成功をおさめる。

 このヒットの理由は、商品の価格(コストパフォーマンス)ではない。“新しいもの”と“(少し高くても)質の高いもの”を求める消費者のニーズを的確に読み取った戦略にある。実際、この消費者ニーズは少し前から別の形で兆候が現れていた。


日本人の“豊かさ”概念の変化
 1980年代初頭、日本人のマインドは大きなパラダイム転換期を迎える。“豊かさ”の概念に変化が起こったのだ。この時期、戦後初めて「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある 生活をすることに重きをおきたい」と答える人の割合が日本人の過半数を超えた(総理府統計より)。以来、この差は開き続けている。

 これが意味するのは、物質的に十分満たされている我が国では、「“同じような”モノが“安く”手に入る」だけでは今や私たちは満足する事ができず、“多少お金を払っても”、“他とは違う質の高い”モノを求める志向があるということである。昨今どのジャンルにおいても「オンリーワン」とか「プレミアム」とか「期間限定」という単語が使われる事があるが、これらは間違いなく不可分な関係にある。

 今回のニュースにあるローソンやファミリーマートの高品質PB事業への力点の変化は、セブンイレブンがある意味“発掘”した日本人の上記ストリームへのキャッチアップと言えるだろう。

ニュース詳細↓


日本経済新聞(10月16日)高品質PBを集客の目玉に コンビニ・スーパー、収益も改善 
ローソン、最高値の食パン 東急ストアは7割増の500品に 
  

このニュースが意味するもの(So What?)


  先に述べた日本人の「新しいもの」「高品質」志向は今後の企業動向を読み解く上で非常に重要なポイントとも言えるだろう。もちろん、(とりわけ「高品質」については)所得および景気の影響を大きく受けるため、不安定な潮流と言わざるを得ない。しかし、アベノミクスで消費者心理や購買力は改善傾向にある為、短中期的には「高品質」志向は継続していくだろう。

 なお、おそらく今後、小売り業界や流通業界でPBは増えていくだろう。本来小売り等の大企業は、大量に仕入れる代わりに仕入れ価格を安くする「スケールメリット」が使えるが、バブル以降再編(淘汰)が進んだ現在、大企業同士の戦いでは、スケールメリットは差別化要因とはならないからだ。今後はいかに「独自商品」、「新しい商品」を出すかの勝負となり、そのための手段としてPBが拡大していくと思われる。



(参考)

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