2013年10月29日火曜日

婚活から読み解くソーシャルストリーム  婚活イベント、国が支援 少子化対策で14年度から

ニュース概要

 内閣府は2014年度から結婚相手を探すために地方自治体が開く「婚活イベント」への支援を始める。少子化対策で地域の先進的な取り組みをモデル事業に選定する「地域・少子化危機突破プラン」に公募してもらい、選ばれた自治体には助成する。
 同プラン全体で2014年度予算の概算要求に約2億円を盛り込んだ。自治体による婚活支援は全国に広がっており、少子化対策に役立つと判断した。


あらすじ(Why?)

 “婚活”という言葉が流行りだしたのは筆者の記憶では2008年頃からである。2009年には流行語大賞にノミネートされるなど、今では一種の社会現象となりつつある。最初は「結婚が遅れた女性」の間だけの(切実な意味での)言葉だったのが、次第にビジネスの対象として広く普及し、今回のニュースのように、国家として支援するまでになった。

 本稿ではこの“婚活”現象の背景について考察してみたい。婚活ブームの背景には多様な現象が存在するが、筆者が重要と考えるのは以下の2つである。

背景1:個人主義の時代への移行

 一昔前(昭和)までは「家族」とか「地域」といった“集団”が機能していた時代だった。僕の両親がそうであったように、「お見合い結婚」というのは頻繁にに行われていたし、結婚に関して親が口出しするなんて当たり前だった。“口出し”というのはネガティブな意味だけでなく、30手前で独身の女性(男性)がいたら「周り(両親やご近所さん、会社の上司等)が何とかする」という風習のようなものが存在していた。

 しかし、平成に入り「個人主義」が加速する。個人主義とは、大まかに言えば「個人の意思を第一に尊重し、個人の責任を第一に重んじる」考え方の事である。換言すれば「家や学校、会社、地域といった大きなグループより、一人一人の利益が尊重される」ということである。


(背景1の背景)

 この背景を挙げればきりがないが、米国型の資本主義の流入が主な理由だろう。2000年代、特に小泉内閣以降、様々な規制(国の保護)が撤廃され“自己責任”、“実力主義”の風潮・考え方が強まった。会社の中での年功序列も緩和され、職業も“自己選択”が普通となった。国が将来どうなるか分からない時代、外部に頼るのではなく、「自分で何とかしなくてはいけない」という考え方が若者の中では一般的になった。

 そして結婚も個人主義の例外ではなかった。今では結婚は“自然とするもの”ではなく、自分で動いて(活動して)幸せを勝ちとるものとなった。「婚活」「就活」「離活(離婚活動)」「妊活」・・・2000年代後半からやたら「××活」の言葉が増えた。それは「活」という言葉に表されるように、「個人が動かなくては行けない」時代になった事を意味している。



背景2:女性の社会進出

 婚活現象におけるもう一つの背景には女性の社会進出が挙げられる。図1でオレンジ色で示した線が25〜44歳の女性の就業率である。働く女性の割合は、2000年から堅調に増加しており、厚生労働省によると2020年には73%に達するとしている。このように、「女性が働く」ことが当たり前になった事が彼女らの晩婚化を促進し、婚活現象に至ったと考えられる。


図1 女性の就業率の推移


(出典)総務省「労働力調査」


(背景2の背景)
 なお、女性の就業率の増加の背景には、政府の女性の就業支援策(育児休業制度や子育て支援策等)の寄与が大きいが、それだけではない。背景1で述べた理由による、昔のような「結婚こそが幸せ・ゴール」という価値観や、「男は仕事、女は家庭」という価値観の崩壊、それに伴う女性の高学歴化などが挙げられる。 
 また、見逃せないファクターとして少子高齢化がある。少子高齢化に伴い、国内の労働人口が減少し、GDP成長率も低下している。そのため、政府は国内の労働力を増やす為に、必死になって女性の労働力活用を促進しているのである。

その他の背景
 先ほど述べたように、婚活現象の裏側には様々な現象が複合的に作用している。全てをカバーしているわけではないが、筆者が本稿を記述するにあたり作成したマインドマップを参考までに以下に示す。

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ニュース詳細↓ 

東京新聞(10月17日)婚活イベント、国が支援 少子化対策で14年度から
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013101701001321.html

日本経済新聞(8月31日)婚活、国が応援 自治体イベントに補助金

http://www.lg-ppp.jp/?p=6022


このニュースが意味するもの(So What?)

 政府は少子化対策の一環(下記URLをご参考)として「婚活」を来年度から支援するとしているが、自治体では既に支援の動きが広がっている。内閣府が2011年に公表した調査では、婚活支援事業を実施していた都道府県は31、市区町村は552に上る。

 自治体が積極的に婚活を支援する理由は、「少子化対策」云々とは別の場所にあるように思われる。実際、地域内で結婚してもらうのはいろいろな意味でありがたいのだ。


 もちろん、多くの自治体では若者人口が減少し、さらには過疎化が叫ばれている時代、地域に定住してもらえる意味でのメリットがある。しかし、さらに重要なのは経済効果である。一組のカップルが結婚すると、当然結婚式場も儲かり、家具屋も儲かり、不動産も儲かり・・・というように経済波及効果が非常に大きいのだ。


 あくまで推測にすぎないが、国が支援する理由には、少子化という長期的な話だけでなく、短期的に効果が出る経済的なメリットも加味してこの政策を行っているのではないか。少子化の時代は結婚産業(式場)は下火と言われるが、これからは結婚式場単体ではなく、公共機関やイベント企画企業等との連携によって、様々なビジネス形態が生まれてく可能性がある。


(参考)少子化危機突破のための緊急対策(2013年6月7日)

http://www8.cao.go.jp/shoushi/01about/pdf/kinkyu.pdf


 

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