2013年8月11日日曜日

JAの変革により日本の農業は新たなステージへ 全農、民間と共同事業 外食や配送、年100億円の出資枠

 農業協同組合(JA)の全国組織である全国農業協同組合連合会(全農)は民間企業と共同出資で農産物の加工工場や配送、レストランなどの運営に乗り出す。年間100億円の出資枠を設定し、食品や物流企業などと資本・業務提携する。

あらすじ(Why?)

 JAは、農家が作った農産物を引き取り、流通させる役割を持つ組織。その他の役割として、農産物の生産に必要な原材料を共同で購入したり、まとめて販売したりする(兼業農家にとってはこのような一括サービスは非常にありがたい)。さまざまな農作物で高いシェアをもち、特にコメでは全流通量の4割以上がJAを介した販売となっている。

 要するに、JAがいれば、農家は農作物を作っているだけでよく、流通・販売等のビジネスを行う必要がないのだ。

 戦後はほぼ全ての農家がJAに会員として加入していた時期もあったほどだが、最近どんどん会員数が減少している。代表的な理由として、①ワタミのように生産から流通・消費まで一貫した事業を行う大規模な農業法人などが現れたこと、②農家の高齢化などにより、農家人口が減少しつつあることが挙げられる。

 そしてJAにとって最も恐ろしいのがTPPの影響である。安倍政権はTPP参加に伴って、「強い農業」を作るために農地の集約と大規模化を進めると宣言している。個人農家を「お得意様」としてきたJAにとって、農業の大規模化と集約化は顧客の大幅な減少を意味し、致命的なダメージを与えかねない。

 農家という常連客が減ることにより、金融業(JA共済)を始め、農業と関係ない生活サービス業の売り上げも大きく減ってしまう。したがって、新たな顧客(農家ではなく、一般消費者や一般企業)を求め、今回民間企業と共に、レストラン経営や物流業等に進出するというわけだ。JAが民間企業との連携を深めれば、農家としても販売先の拡大につながり、また付加価値の高い加工工程に参加したりしやすくなるため、メリットが大きい。
 

ニュース詳細↓

日本経済新聞(8月9日)全農、民間と共同事業 外食や配送、年100億円の出資枠 
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130809&ng=DGKDZO58294900Z00C13A8EA2000


このニュースが意味するもの(So What?)


 JAは依然としてTPPへの反対姿勢を維持しているが、7月の参議院選挙で自民党が大勝した時点で、既に農業自由化への潮流が止められないものであることを認識しているのだろう。今後JAは、新規分野への展開速度をさらに加速させると思われる。それは、JA内部からではなく、国からもプレッシャーがかけられているからだ。

日本経済新聞(8月9日)菅官房長官「農協、役割見直しも」 政府会合で注文 麻生氏も同調
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130809&ng=DGKDASFS0805K_Y3A800C1EA2000


 この記事にあるように、政府としては、農家自身に(海外への輸出を始め)自分で稼げる力を付けてほしいため、JAに対し農作物流通システムの抜本的な改革を求めている。具体的にはもっと海外ルートを開拓せよということである。

 したがって、今後は「グローバル市場への展開」という言葉が日本の農業分野において、1つのキーワードになっていくことは間違いない。





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