2013年8月16日金曜日

ディズニーランド30周年の裏側にあるもの 〜日本と外資のソフト力〜



 今年ディズニーランドは30周年を迎えた。老若男女のディズニーランドファンにとっては"たまらない"年であり、30周年記念パレードを観に、何度も足を運ぶ人も少なくないようだ。

 かく言う僕も"ファン"の一人として、先日記念パレードを堪能した一人だが、本稿では少し違う角度から「30周年記念」について考察してみたい。

 まず第一に、「テーマパークや遊園地が30年間存続するということ」はどれほどすごいことなのか。実は、「30年」という年は、ビジネス界では一般的に「企業の寿命」の年数と言われている(※最近は通説ではなくなりつつあるが)。その意味で、今年寿命の年を迎えるにも関わらず衰退する気配の感じられないディズニーランドは一目置かざるを得ない。

 とはいえ、30年以上続いている遊園地自体はディズニーランド以外にも、後楽園遊園地(現東京ドームシティアトラクションズ)、富士急ハイランド、常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)、豊島園など複数存在することは確かである。

 しかし、いずれも(日本の遊園地・テーマパーク業界全体的に)バブル崩壊以降、収益が低迷している。家計に置けるレジャー・娯楽費は、不景気になると最初に削られるため、この業界は基本的に国全体の景気を繁栄しやすいのだ。

 そんな中、ディズニーランドだけは様子が異なる。設立以来30年間、収益がずっと右肩上がりなのである。



 我が国では、1980年代=バブル期に、全国で遊園地・テーマパークの建設ラッシュが相次いだ。しかし、バブル崩壊以降、次々と姿を消していき、現在は「東のディズニーランド(ディズニーリゾート)」、「西のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」の2強時代と言われている。

 ここで、両社はどちらも「外資系企業」であるという事実こそが本稿のポイントである。ディズニーとUSJが現れて以降、国内企業の運営する既存の遊園地などの客が奪われ、相次いで閉鎖に追い込まれた(国内の遊園地等は大半が20歳を待たずして姿を消している)。

 外資系テーマパークが、東日本大震災をも乗り越えて好調な業績を維持し続ける秘密は何だろうか。それはひとえに彼らの戦略性にある。

 ディズニーとUSJの共通点は、その出発点が映画製作会社であるということだ。映画製作、DVD販売、テレビ放映、そしてテーマパークでのキャラクター使用という一連の流れがあって初めて、その巨額の投下資金が回収できるというまさにコンテンツビジネスであることを理解しておく必要がある。

 つまり、富士急ハイランドのFUJIYAMAに見られるようなジェットコースターの迫力(ハード力)ではなく、コンテンツ=世界観(ソフト力)が集客力の鍵を握るのだ。ただの"スリル"のような単発的な刺激は、(ストレス解消にはなっても)一年のうち何回も足を運ばせるような魅力にはなり得ない。それよりも、"夢の国(という世界観)"、つまり映画や物語の登場人物の一員になるという"非日常的な"体験こそが人気の秘訣なのであろう。

 ディズニーとUSJは、資金力と並んでこのソフト力があるからこそ、外資系テーマパークは長寿命を保てるのである。

 思えば、日本企業と外資企業のソフト力の違いが現れているのはテーマパーク産業だけではないだろう。例えば、Sonyと外資の「勝ち組企業」であるApple社を比べてみよう。

Sony 
http://www.sony.jp/tablet/solution/

Apple
http://www.apple.com/jp/ios/videos/#developers

 どちらもタブレットの映像広告であるが、趣向は正反対である。Sonyは「こんな便利な機能が搭載されている」というメッセージなのに対し、Appleは機能ではなく「タブレットが存在する世界」を我々に訴えている。

 違う言い方をすると、消費者に対し、日本企業は得てして「What?(何の機能を)」から入るのに対し、外資は「Why?(そもそもなぜそれが必要か)」というソフトな面から入り、それを実現する手段として「What?(どんな機能が必要か)」に至るというストーリー性(戦略)を有しているように思える。このことをより理解して頂くために、以下のTEDは必ず観てほしい。



 
 日本企業と外資の「ソフト力」の違いが、どのような文化的背景に由来するのかは定かではないが、ディズニーの人気や、国内のAppleユーザの拡大状況を見る限り、日本人消費者である私たちも外資のスタンス(戦略)を無意識的に好んでいることは間違いない。

 日本の景気や製造業の競争力の衰退を、新興国をはじめとする外部環境のせいにするのは容易いが、もう一度自分たちのソフトな部分(ユーザーに対するスタンスや戦略)を見つめ直す時期に来ているのかもしれない。

参考
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130721&ng=DGKDZO57563890Q3A720C1MZA000

0 件のコメント:

コメントを投稿